4週6休、12時間の肉体労働で月収34万円

約30軒に配達し終了すると、その足で会社が契約しているスーパーへ直行する。

「ここで積み込むのはお米、ミネラルウォーター、カップ麺、ビールや清涼飲料水、レトルト食品がほとんどです。1軒で5キロのお米を2袋とミネラルウォーターを2ケースとか、24本入りの缶ビールのケースを2つとカップ麺を1箱、ウィスキーとか焼酎のジャンボボトルを5、6本。こんな感じです」

スーパーの配達は2便あり、午前便分が終わった2時前後にようやく昼休憩を取れる。時間が押して休憩を取れないときは運転しながらコロッケパンとかカレーパンを食べておしまいということもある。

「もう一度店に戻って2便目の荷物を積み込み、配達し終えるのが夕方5時頃です」

仕事はまだ続き、次に向かうのはホームセンター。当日配送の18~20時の時間指定された荷物を積み込んでまた走り回る。

「ここの荷物は重たくてね。テレビ、布団、畳の上敷、組立て式の家具、自転車、ペット用品、介護用品。こういったものが多い」

20時までに配送し終えられるのはまれで、21時近くまでかかってしまうことも度々。客の方から時間指定してきたのに不在ということもあってイラッとすることがある。

「もう終わったときには一気に疲れが出てきます。エレベーターのない古いアパートや団地を多く回ると腕と太ももが痛くなるし」

仕事開始が7時30分で終業が21時近く。決まった休憩時間はなく15分~20分の細切れ休憩を4、5回取るだけ。すると労働時間は12時間ぐらいになる。

「デスクワークじゃないでしょ、基本は荷物を持って駆け足。そりゃ疲れる」

収入も期待していたほどではない。

「4週6休、月24日稼働で34万円前後、休みを週1にしたら37万円ぐらい。これが精一杯です。モデルケースとして記されていた月収40万円とか50万円以上可なんて無理です。少なくてもわたしには出せない数字ですよ」

1カ月の労働時間は平均280時間前後だから、1時間単価はせいぜい1250円程度。近所にあるパチンコ屋がアルバイトを募集していて、時給が1450円となっていたから嫌になる。

「ガソリン代はもとより、車の維持費は全部自分持ち。タイヤ交換やオイル交換用に天引きしておくのを含めると4万円ぐらい出ていきます。これも大きいですよ」

運送会社の社員ではないから社会保険は自治体の国民健康保険と国民年金に加入しているが、この保険料も毎月6万円ちょっと払っている。

「こんなわけで相変わらず妻のパート収入が頼りなんです。情けなくなってくる」

三が日は過労で動けず

体調も良くない。この仕事を始めて腕痛、腰痛、膝痛がひどくなった。休んでも疲れが取れず、ひどい倦怠けんたい感に襲われる日もある。

「やっぱり働き過ぎなんでしょうね。自分でも危険だと思うことがあるから」

特に昨年末はひどかった。12月はお歳暮とクリスマスが重なるので荷物の量が格段に増える。休みはたった3日で、大晦日も夜8時まで働いていたほどだ。初めて月収が40万円を超えたが労働時間は320時間もあった。

「三が日はどこへ行く気もなかった。寝正月というより過労で倒れていたのに近い」

最近は心配した奥さんに「もう辞めた方がいい」と言われている。

「妻が言うには、いつも顔色が悪いし人相も変わったと。まあ、自分でも鏡を見ると急に老け込んだなあと思います」

あくまで噂話だが、別の営業所に出入りしている委託ドライバーが突然死したという話を聞いたこともある。

自分の健康と同じく、事故に対する心配も大きい。

「ここまでは無事故でやってきたけどヒヤリとしたことは何度かある。特に終わり近くの夜間は怖い、朝からの疲れが影響しているのか睡魔に襲われて瞬間的に意識が飛ぶことがある。信号と信号の間400メートルくらいの距離を何も覚えていないことがありました」

一昨日の夕方には環七通りで2トントラックと乗用車、オートバイが絡む多重事故を処理している現場横を通ったのだが、こういうのを見てしまうとハンドルを握るのが怖くなる。

「社員じゃないからぶつけてもぶつけられても、会社が助けてくれたり事後処理をしてくれたりはしません。有給休暇もないから干上がってしまう」

過労でつらそうな女性
写真=iStock.com/THEPALMER
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