非正規雇用から抜け出すにはどうすればいいか。33歳の女性はコロナ禍で事務系派遣を雇い止めになり、バイト3つを掛け持ちしている。どうにか生活はできているが、余裕はまったくなく、最高の贅沢はサイゼリヤだという。ライターの増田明利さんが書いた『お金がありません 17人のリアル貧困生活』(彩図社)より紹介しよう――。

※本稿は、増田明利『お金がありません 17人のリアル貧困生活』(彩図社)の一部を再編集したものです。

大きな段ボールに入った荷物を運ぶ配達員
写真=iStock.com/vitranc
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震災の影響で入社延期からバイト→事務派遣へ

永島倫子(仮名・33歳)
出身地:愛知県豊田市 現住所:埼玉県志木市 最終学歴:大学卒
職業:アルバイト掛け持ち 雇用形態:非正規 収入:月収約17万円
住居形態:賃貸アパート 家賃:5万3000円 家族構成:独身 支持政党:特になし
最近の大きな出費:冬物衣料品のクリーニング代(3620円)

派遣先を雇い止めされて失職したのが2020年8月。新型コロナの影響は大きく、派遣会社から次の派遣先の紹介はない。仕方ないからアルバイトをしているが生活は日に日につらくなっている。

「半年先はどうなっているか考えるとブルーになります、本当に先が見えないから。わたし、何をやっても上手くいかないんです」

大学を卒業したのは11年3月。最初のつまずきはこのとき。就職先は決まっていたが東日本大震災の余波でまず入社延期ということにされてしまった。これがケチの付き始めだった。

「貨物運輸の会社だったのですが、4月入社から10月入社に半年延期するということにされたんです」

不安は大きかったが、望みを捨てずに飲食店や物販店でのアルバイトで暮らしていた。そんな中、業績の回復が遅れているので採用は白紙撤回するという紙切れ1枚で望みを絶たれた。

「ハローワーク、ヤングハローワークに通いましたが、良さそうな会社や仕事は少数で応募しても不採用の連続でした」

フリーターはまずいと思い、方向転換して事務系派遣の道へ。スタッフ登録したら1カ月もしないで派遣先が紹介された。

「業界大手の派遣会社だけあってクライアントは大手著名企業が多かったです。自分の出身大学を考えたらまず入社できないところばかりだったから、何か得したような錯覚を覚えました」