49歳で通勤管理人に転じるも「悲しくなるほどの低収入」

退職したのは2017年3月末。規定の退職金に若干の上乗せがあったが再就職の支援などはなし。あとは自分で何とかしてくれという感じだった。

「再就職活動を始めたときが49歳。同業他社でこんなオッサンを採るわけがない。中高年の事務、営業などは求人が最も少ないんです、なのでハローワークの指導でマンション管理士の職業訓練を受け、資格を取って建物管理会社に入ったんです」

通勤管理人として2つの大型マンションに派遣され、ゴミ出し、共用部分の清掃、駐車場の管理、簡単な営繕作業などを担当していた。

清掃する作業員
写真=iStock.com/terra24
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「その地域のゴミ収集日に合わせて月水金はこっち、火木土はあっちというローテーションでした。仕事そのものはどうっていうことはない、危険な作業もなかった。だけど低賃金、悲しくなるほどの低収入でしたね」

身分も半年ごとの契約社員。賃金は日給8800円で、住宅手当、扶養家族手当などは一切なし。月25日働いても月収は22万円が限度だった。

「手取りだと18万円台の前半でした。明細書を見てもため息しか出ません」

奥さんもパートで働くようになったが合計しても生活費全般として使えるのは26万円前後。生活できないということはないが、豊かで少し余裕があるような暮らしは送れなかった。

「やった分だけ収入になる」という甘美な文言

「もうちょっと稼ぎたいと思って別の働き口を探し始めまして。またハローワーク通いしたり求人情報誌をチェックしたりしていたんです。そんなときに目に入ってきたのが今の仕事なんです」

雇われないという新しい働き方、やった分だけ収入になる、万全のバックアップ体制、平均月収40万円超、50万円以上も可能……。こういう文言がなぜだか輝いて見えてしまった。

「説明会に参加してシステムを聞いたら加盟金などは必要なし、車両は持ち込み、荷物1個につきいくらという契約だということでした。会社と業務委託契約を結んで働く個人事業主という説明だった」

自家用車として乗っていたファミリーカーを売却し、そのお金で中古の軽ワゴンに買い換え、ボディに契約した貨物運輸会社のロゴ入りステッカーを貼ってスタートしたのが19年10月のこと。

「よーし、稼げるだけ稼ぐぞって意気込んで始めたけど、稼ぐのは簡単じゃなかった」

配達する荷物の単価は大きさ、重さで細かく分けられていて80円から160円。平均すると約140円ぐらい。

「1日に配達する荷物の数は少なくて100個、多いときは120個くらいです」

必然的に労働時間が長くなる。営業所に出勤するのが朝7時30分頃、荷物を積み込んで出発するのが8時ジャスト。ここから集荷と配達を繰り返して終了できるのは早くて夜8時、道路事情が悪かったり不在で再配達が何度もあると9時でも終わらないことがある。

「1日の仕事の流れとしては1便が通販会社の荷物で地方の名産品やら化粧品、小物家電品、書籍などが大半です」