京都人は独特の言葉づかいをすることがある。脳科学者の中野信子さんは「京都には疑問形を使うことで、遠まわしに意図を伝える文化がある。すべての疑問形に裏の意味があるわけではないが、注意が必要だ」という――。(第1回)

※本稿は、中野信子『エレガントな毒の吐き方 脳科学と京都人に学ぶ「言いにくいことを賢く伝える」技術』(日経BP)の一部を再編集したものです。

贈り物を示す日本の服を着た女性の手
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コロナ禍での「マスク足りてる?」はどういう意味か

レッスン1 「(遠まわしな)質問」で、相手自身に答えを出させる

京都人は、相手に何かを察してもらいたいときに、そのことを直接言うのではなく、疑問形にして、本当に伝えたいことを考えさせるように言うことがあるそうです。

たとえば、家の中でふすまやドアを開けっ放しにしていると、「誰か来るの?」と言われる、というのはもう定番の形だそうです。この場合「誰かこのあとから来はるの?」と聞かれたって、「あとから来はる人」なんかいるわけがない。それをどちらも承知しているわけです。真意は「開けっ放しはやめようね」という意味だということを、お互いに分かっている。

ほかには、「これは風水か何かですか?」というバリエーションもあるそうです。疑問文に込められたメッセージ、あなたは気づけますか?

新型コロナウイルスのパンデミックが起きた当初、Twitterで話題になったエピソードも好例です。「(コロナ禍に)京都に帰省していいか」という子どもからの問いに対する「東京大変らしいけど、そっちマスクとティッシュ足りてる?」という返信(※1)。これは一見、東京在住者を心配するふりを装いながら、「感染者が多い東京からこっちに帰ってくるな」とクギを刺している、「イケズ」なのだといいます。

慣れていないとなかなか分かりづらいかもしれませんね。会話の流れによっては普通の言い方です。

(※1)みやびん.[@miyabine].(2020年7月15日).[ツイート]地元の京都に来週帰っていい? ってLINEしたら「東京大変らしいけど、そっちマスクとティッシュ足りてる?」っていう意訳すると京都に来るなっていう返信が秒で来た。