京都には「イケズ」と呼ばれる遠まわしなコミュニケーションが根付いている。脳科学者の中野信子さんは「会話をしていて違和感があれば、イケズを言われている可能性がある。京都人同士のやり取りはスポーツに似ている」という――。(第2回)

※本稿は、中野信子『エレガントな毒の吐き方 脳科学と京都人に学ぶ「言いにくいことを賢く伝える」技術』(日経BP)の一部を再編集したものです。

女性の顔のクローズアップ
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無理やり距離を詰めてくる人にどう対処したらいいか

レッスン1 「依存」「下心」「利用してくる人」を撃退するには

褒められたとき、罠みたいなものが用意されていて、うっかりそれに乗りすぎるとちょっとイタい、という現象は少なくありません。そのリスクは、「うっかり褒め言葉に乗ってしまうと笑われる」ということと、「あやしい好意の餌食えじきになってしまう」ということの2つがあり得ます。

褒める以外には、やたらと傷を開示してきて、「あなたには分かるはずです、あなただけに話すんです」などと、距離を縮めてこようとする人もいます。皆さんが寄せてくださったアンケートの中には、こうした声も実は、少なからずありました。

このタイプの人は、あなたと仲良くなろうとしてそのような行動に出るのですが、うっかりすると「ああ、こっちの傷も聞き出そうとしている」という流れに乗らされてしまいます。適切な距離感を持っていい関係を築くには、ちょっと近すぎてしまう。

そういうとき、京都人たちはどうしているのでしょう。

歴史的にもあったはずです。京都人に対して、ほかの地域の人が、近寄ってくる。うかうかと言質を与えるわけにはいかない。けれども怒らせて首をはねられては元も子もない。現代でも、女性に対して、男性がそういう風に近づいてくることも結構ありますし、逆パターンで、お金のある男性に下心のある女性が近づいていく場合もそうかもしれません。弱さをあえて開示して、相手の好意を引き出そうとするやり方です。

このやり方はかなり強力で、見抜こうとしていても、頼られる快感に抗あらがえず、気づいたときには利用されてしまっている、ということになりかねません。