「学力の遺伝は55%」という研究結果をどう捉えるか

次に、才能にまつわる「遺伝か環境か」という話に移りましょう。

遺伝学についての研究や学問は古今東西で行われています。

皆さんも専門的な論文を読まなくても、「プロスポーツ選手の親もまたスポーツ選手」というような話を見聞きしているでしょうし、なんとなく遺伝の強さを想像できるかと思います。それだけに「どうせ……」とあきらめのような気持ちになるかもしれません。

実際、音楽、数学、スポーツの分野では、とくに遺伝の影響が顕著なデータがあります。

では、気になる、学力(テストの点数)についてはどうでしょうか?

行動遺伝学者・安藤寿康氏の研究結果によれば、学力の遺伝の割合は55%、共有環境が17%、非共有環境が29%という数字があり、それが参考になるかもしれません。

このデータは一卵性や二卵性などの双生児を対象としていて、「共有環境」とは双子が同じ両親の下で同じ環境で育てられた環境のことを言います。いわば、食事などの家庭環境のことです。もうひとつの「非共有環境」とは、習い事が違う、学校のクラスが違う、部活が違うなどの一人ひとり別々の環境のことを示します。

遺伝の影響が大きいようにも思えますが、100%ではありません、環境もまた大きく子どもたちの将来に影響を与えることがわかるはずです。

「どうせ……」というレッテルは、親こそはがしてもらい、いまからできることを考えてもらいたいところです。

学力は才能と努力の掛け算

先ほどの学力の遺伝の割合は55%、共有環境が17%、非共有環境が29%という数字から、親ができることとは何でしょうか? 次の図表2をご覧ください。

学力とは、「才能×努力」の掛け算から成り立ちます。

その上で親ができることは、「刺激」「体力」「学習環境」の働きかけです。

親からの働きかけ①刺激
浜田一志『東大野球部式 文と武を両立させる育て方』(かんき出版)
浜田一志『東大野球部式 文と武を両立させる育て方』(かんき出版)

本物を見せることや体験させること、子どもたちのやる気を促すことです。もともと持っている才能を開花させるために行います。脳の発達は30代まで続きますが、8歳から16歳くらいの多感な時期にピークを迎えます。その大切な時期に、お子さんにさまざまな体験をさせて刺激を与えてあげてください。

脳の発達に良い刺激は、運動、勉強、五感への刺激です。

親からの働きかけ②体力

日々の食事や運動です。運動部の部活に入れば、自然と培われることでしょう。才能と努力、双方に影響を与えるものです。

親からの働きかけ③学習環境

どんな習い事がいいのか、塾はどうすればいいのか? お友達付き合いはどうすればいいのか? など多岐にわたります。

親ができることは、この3つしかありません。ご自身やわが家では、どんな後押しができるのかを考え、実行してみてください。

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