定評のある宇都宮の餃子メーカーとコラボ

大和フーズの食品作りには定評があった。材料に強いこだわりを持ち、職人気質のある社内風土で食品業界でも知られる存在だった。通常、冷凍餃子には廉価な外国産ニンニクを使うケースが多い。しかし、大和フーズでは青森県産のニンニクを使い、他の食についても国産にこだわっている。その結果、製造原価が高くなり、どうしても販売価格も高めになっていた。

しかし、餃子の味は明らかに他の宇都宮餃子よりおいしいと評判の会社だった。同じ宇都宮の地場で餃子を製造する食品メーカーとは異なった、青森県産のニンニクを使ってこだわりの餃子を作り続けていた結果、宇都宮の餃子メーカーの中でも少々目立つ存在だったのだ。

しかし、地元で孤立し、利益率も低減……。会社の経営にテコ入れを行わざるを得ず、戸田商事の傘下に加わったのだ。

そんなこだわりの餃子作りに専念する職人気質も東スポと相性がよかったようで、実際に戸田商事、大和フーズ2社と「東スポ餃子」との製造販売の話はすんなりとまとまった。残りは東スポ社内の調整だが、平鍋氏は上層部に決済を取ると自分の責任においてプロジェクトを軌道に乗せたのだ。

“良い加減”のニンニク量が差別化の鍵

「『東スポ餃子』は絶対に成功するという根拠のない自信がありました。『失敗』の文字すら浮かばなかった。ですから、戸田商事の鈴木氏と2人でどんどん進めていったのです。社内で会議にかけることによって意見調整をするなどの時間がかかることが嫌だったということもあったので自分が責任を取る形で勝手に進めようと……」

そう語る平鍋氏だが、実はプロジェクト成功の秘策も織り込まれていたのである。

東スポが餃子を売り出すというからには他との差別化も必要になるだろう。もちろん、これまで経験をしたことのない業種でビジネスを始めるにあたって、商品性についても知りたいことは多い。その点について平鍋氏は語る。

「東スポが餃子を販売するからには、こだわりというか、東スポらしいものを出そうと考えました。やはり東スポらしく、『尖っているイメージ』を出したかったのです。もちろん普通の餃子では失敗するだろうとも思いました。そこで、何をするかを検討して、試行錯誤したのです。」