笑顔を見せて、頭を下げる喪主

「与えられた命を真っすぐに、素直に生きることをルイはやり抜いてくれました。2年も生きてくれたんです。小さな体で病と闘い、力いっぱい生き抜いてくれたのはすごいことだと、娘を尊敬しています」

安部由美子『もしも今日、あなたの大切な人が亡くなったとしたら』(青春出版社)
安部由美子『もしも今日、あなたの大切な人が亡くなったとしたら』(青春出版社)

お父さまからその言葉が発せられるとご参列の皆さまが姿勢を正したように感じました。

「こうして皆さまがルイのためにお越しくださり、にぎやかに送ってくださって本当にうれしいです。映像からルイの声が聞こえたときは、うっかり泣いてしまいましたが、あれは幸せの涙ですから誤解のないようにお願いします。映像を撮っていて感じたことがあります。人って、どんなに大切な人でもいつか声も忘れてしまいますよね。だから皆さまも大切な人の写真だけでなくて、声も残すようにしてみてください」

実感として伝わってくるお言葉に、ご参列の皆さまも静かにうなずいていました。

「どうぞ、ひたむきに生きた娘に笑顔を向けてやってください。皆さま、自分の命を精一杯に生きて参りましょう。本日はありがとうございました」

お父さまは笑顔を見せて、お母さまと深く頭を下げられました。プロジェクターから外されたビデオカメラが、葬儀担当者の手からお父さまの手へと返されると、お父さまはまるでルイちゃんを抱っこするかのようにいとおしそうに受け取りました。

親族席へと戻っていくご両親と妹のマユちゃん、そして故人のルイちゃんには、皆さまから惜しみない拍手が送られました。

このお葬式の要となったのは、ご家族自らがお葬式を手掛け、故人を送りたいとの思いでした。故人の生前のビデオを用意し、社寺で伝えたい言葉をあらかじめ準備してこられたのです。

わずか2歳とはいえ、いのちある限り精一杯生きて見せてくれたルイちゃん。その姿や声を映像や音声に残すことは、後々に遺された人たちをどれだけ救ってくれるかしれません。写真を撮ることやそのときどきの情景、気持ちをつづっておくことが、大切な人との日常を懐かしく思い出すための宝となることは言うまでもありません。

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