なぜ学校に行けなかった子供たちが登校率85%超なのか

なぜ、そんなことが起きたのか。

それは、草潤中が目指した、「あらゆることを自分で選べる」ことを大切するというコンセプトに鍵があるようです。

こんなエピソードがあります。草潤中には、制服も校則もありません。なので、入学当初、ヒールを履いて学校に来ると宣言した生徒がいました。でも、それを否定しなかったら、結果的に、自転車通学にはヒールは向かないと自分で判断して、靴を変えたのです。

「ヒールを履いて学校に来るなんて、おかしい」とか、「活動しにくいからやめた方がいい」と指導するのが当たり前のようだけれど、草潤中の先生はそうしなかった。だから生徒は自分で考えることができたのです。

ミュージックルーム 生徒たちは新入生を歌で歓迎した
撮影=中曽根陽子
ミュージックルーム 生徒たちは新入生を歌で歓迎した

この学校の先生は、全員が草潤中での勤務を希望または納得して着任しています。それでも最初からうまく行くことばかりではありません。前出・教員は「生徒たちが登校してくる前の朝時間を使って、先生同士の対話の時間をとりながら、日々起きる一つひとつの出来事を全員で共有し、どうしたらいいのかを考えていきます。そのプロセスを通して、先生の当たり前を一つずつ脱いでいっているようです」と話します。

この学校の取材を通して、ある意味、不登校という意思表示ができた子はそれだけで一歩前に進んでいるのかもしれないと思うようになりました。この学校の実践が、不登校特例校の中で終わらず他の学校に広がることで、救われる子供はたくさんいるはずです。子供が学校に合わせるのではなく、子供が主体の学校からにしていく。考えてみれば当たり前のようなことです。そんな公立学校が全国に広がり、不登校特例校という呼び方がなくなる未来が来てほしい。そんな思いを強くしました。

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