仕事によって減少した体力やメンタルは、「私」の時間を使ってリカバリーします。消耗して→リカバる→消耗して→リカバる……このサイクルを上手に回しながら“キャパシティを拡げ底上げを図る”(例:新しい経験をする、勉強する、心身を鍛えるなど)こともできれば、常に良いコンディションで仕事をこなしながら成長もしていける好循環が維持できます。

自分の調子や創造性はコントロールできる

しかし、仕事には想定外がつきもので、予定していた「私」の時間ではリカバリーが追いつかなくなることもあります。その場合、重要度・優先度の高くない仕事は“やらない”ことにして、空いた時間を「私」に充てます。好きなものを食べたり、15分間静かに目を瞑っているだけでもいいのです。

ただぼんやりと過ごすのではなく「自分は今、リカバリーしている」と意識しながら、短時間でも積極的に何もしないでいると頭がリフレッシュして、その後は良いアイデアが生まれたりするのです。日常業務にはルーティンな作業をこなすとか意思決定をすることが多いのですが、これには収束的思考が求められます。そうすると相対的に発散的思考/クリエイティビティが低下していってしまいます。ここでリカバリーを挟んでスイッチを入れ替えることで、休憩した後には良いアイデアが生まれやすくなります。

私は日頃から「Garmin」というウエアラブル端末を身に着けているのですが、これはストレスやカロリー消費などを常時計測して、自分にどれくらいのエネルギーが残っているかをグラフで表示してくれます。エネルギーは質の高い睡眠が取れて気持ち良く目覚めた朝には満充電されているが、そこから出勤して疲れる作業やハードな交渉をこなすとストレスが溜まって低下していく。一方で、ランチを取ったり、休憩を挟むとちょっと回復する――といった具合に、かなり正確です。

これを見ているとどんな仕事にどれくらいエネルギーを使うか、どういったリカバリーをすればどのくらい回復するのかが、理解できるようになってきます。そうしたらその知識を生かして「金曜日の夜はビジネス会食で疲労がピークに達するので、土曜日は完全オフにしてリカバリーする」「土曜日に回復するので日曜日の午前中は最もクリエイティビティが発揮できる状態にある。発散的思考が求められる資料作りに充てよう」など、効果的なスケジュールを組むことができるわけです。

タスクを大量に抱え、スケジュールを詰め込みすぎても、アウトプットの質が低下したり、そもそも消化できないようであれば意味がありません。自分のフィジカル・メンタルの状態をできるだけ正確に知ることが、パフォーマンスを最大限に発揮できる有効な時間の使い方を実現するコツです。

(構成=渡辺一朗 撮影=金城匡宗)
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