大事なのはいざというときの言葉

この映画は夫婦の物語です。時に夫婦というのは、いちいち言葉を交わしたりしなくても、深いところで繋がっているから大丈夫、みたいに言われることがあります。でも、それはお互いの関係や調子が良いときの話。もし相手の調子が悪そうだったりした場合は、ちゃんと声をかけないと。

付き合いが長くなればなるほど、お互いのことをわかったふりをしてしまって、実際はわかってなかった、ということが起きます。だから、その時々で、どんな言葉を相手にかけるかが大切だと思います。裕次郎は、妻に対して、余計な一言だったり、言わなくてもいいことをすぐ口にしてしまうところがありますが、大事なのはいざというときの言葉です。

アーティスト 香取慎吾さん
香取慎吾さん

夫婦関係に限らず、あらゆる人と人との関係において、僕は人と深く繋がりたいと思うタイプで、人を深く愛します。仕事相手でも友人に対しても、言うべきじゃないことは言わないようにしています。こういう仕事をしていると、自分の発した一言で多くの人が動いてしまうことを自覚しているからです。

たとえば映画に出演する場合。僕は衣装合わせとかで意見を求められたとしても、「どうですかね〜」としか言いません。それで時間が過ぎるのを待ちます。自分が演出やプロデュースを務める作品であれば、細かい部分にまで意見を出しますが、いち出演者として参加する作品は、あくまで監督のもの。そういうときは、どっちがいいとも言わないし、どっちでもいいとも言わない。あくまで「どうですかね〜」とだけ伝える。監督や衣装の方の決めたことを全うするのが僕の仕事です。

何か相手に対して思うことがあっても、自分が飲み込めるかどうかが大事で、その原因について何度も考えるようにしています。いやな部分があったとして、それはその人の個性かもしれないし、その人なりの考えがあってのことかもしれない。そこまで考えて、もし飲み込めるようであれば、何も言いません。思ったことをいちいち言えば、周りの人から「うるさいな」と思われてしまうでしょう。

こういう慎重な姿勢は、小学生のときから芸能界で仕事をする中で培われたのかもしれません。最近はブログやTwitter、YouTubeもやっていますが、発信する言葉にはかなり注意しています。ファンの皆さんがどんな反応をしてくれているか、間違った表現をしていないかなどをチェックするため、コメントはすべて見るようにしています。