アーティストとして人々の心を動かし続けてきた香取慎吾。仕事の現場では、どのような言葉で仲間たちの心を動かしているのだろうか。「プレジデント」(2022年9月2日号)より、記事の一部をお届けします――。
「いい意味で」とすぐ口にする浅さ
これまで自分が出演してきた映画を振り返ると、漫画が原作だったり、いわゆるキャラクターものが多くて。それが今回の『犬も食わねどチャーリーは笑う』では、あくまでフラットな日常を生きる、ホームセンター勤務の田村裕次郎という役を演じています。
この裕次郎という役は、一言で言えばダメな男。自分で演じていながら、腹が立ってくるほどでした。それなりに仕事はできる人間で、職場の人間関係もうまくやっているように見えるけれど、人間的に浅いんです。
何かを発言した後に、「いい意味で」と言うのが裕次郎の口癖。この言葉遣いにも、あまり物事を深く考えていない彼の特徴が出ています。監督が「いまの良かったよ」と声をかけてくださるときは、心の中で「なんて最低なやつなんだ」と思ってしまうようなダメっぷりを発揮しているシーンなので、素直に喜べないというか、複雑な心境でしたね。