たとえば職場の人間関係がうまくいっていないなどの原因で、心にモヤモヤがあって、やる気が起きないという場合があります。

気がかりがあってやる気が出ない場合、気分転換が有効です。このときも環境あるいは行動で気持ちを切り替えていきます。

私であれば、何か嫌なことがあると「サウナに行こう」と考えます。そればかり考えていると少し元気になります。みなさんも「嫌なことがあったら、これをやって忘れる」という、独自の行動を何か見つけてみてください。

仕事で大きな失敗をしたとき、多くの人はがっくりして一時的にやる気を失ってしまいますが、中には少しもめげずに、すぐに「がんばるぞ!」と復活する人もいます。

そういう人を「精神的にタフ」と言ったりしますが、実際には気持ちの切り替えが上手なのです。過去に起きたことにとらわれず、これからやることに気持ちを切り替えられれば、悪いことがあってもその影響を長く引きずることはありません。

日常でも「今日はもうあきらめよう。その代わり、明日からがんばろう」というふうに、前向きに気持ちを切り替えていくことが大事です。

スケジュールに余裕があるのならその日はもう仕事をやめてしまう。職場でやる気が出なかったら、「家に帰ってからやろう」と考える。家に戻ると環境が変わるので、気持ちも切り替えやすくなります。どうしても早くやらなければいけない場合は、シャワーを浴びたり、食事をしたりといった行動でリフレッシュします。

人間はやる気がなくて当たり前である

あるときまでは一生懸命に取り組んでいたのに、ある時点を境に急にやる気を失ってしまうことがあります。

ケース別チェックリスト

それが趣味であれば「飽きた」というだけですが、仕事についての働きぶりが変わってしまったとなると問題で、中には人生全般について、ある時点まであった猛烈に前向きな気持ちが失われ、何事にも投げやりになってしまうという人もいます。

「燃え尽き症候群」と呼んだりしますが、これは正式な医学用語ではありません。精神医学的に言えば、単純にやる気がなくなったということ。これも原因は同じで疲れてしまったのか、報酬系への刺激がなくなってしまったのか、どちらかです。

突然自分のやる気がなくなると異常事態かと思うかもしれませんが、そこまで心配する必要はありません。そもそも人間は、あまりやる気がないほうが普通なのです。

もちろんやる気がないといっても程度の問題で、「話しかけても返事もない」というのでは1度診察を受けるべきですが、基本的にやる気を持たないことは、むしろ人間として通常運転であるということです。

ガンガンにやる気があるというのは、人間の本来の状態から見るとテンションが上がりすぎで、精神科医としてはそういう人のほうが「ちょっと心配だな」と感じます。それはその人が「躁状態」にあると思われるからです。人間の心のエネルギーは容量が決まっているので、がんばりすぎると反動で落ち込んでしまうのです。

そうはいっても、日常生活においては、やる気を出さなければいけない場面も多いでしょう。どんな「ご褒美」が「やる気スイッチ」を押してくれるか、自分のなかで探してみてください。