立って勉強すると脳が効率よく働く

スウェーデンではいまや、オフィスで立ち机を使うことが流行のようになっている。立って仕事をする人のほとんどは、仕事をしながらでもカロリーを消費できるという理由で立ち机を使っているだろう。

実際に、座っているときよりも立っているときのほうが、エネルギーの消費量は2倍近く(!)に増える。だがじつは、カロリーの消費など比べものにならないほど、すばらしい効果が脳にもたらされるのである。

学校でも職場でも、立って作業をすると脳が効率よく働くのだ

ある研究チームが、7年生を対象に、認知機能を測る各種のテストによって子どもの学力調査を行った。

それによると、教室で子どもたちが立ち机を使うようになってから、集中力やワーキングメモリー、認知制御の能力が増したという。この認知機能のテストでは、読解力や記憶力、段階を経て問題を解決する力など、学力にそのまま反映する能力を調べることができる。

アンデシュ・ハンセン著、御舩由美子訳『運動脳』(サンマーク出版)
アンデシュ・ハンセン著、御舩由美子訳『運動脳』(サンマーク出版)

そして立ち机を導入する前と後では、このテストの結果にかなりの差があった。立ち机を使うと、テストの結果が平均で10%も上がっていたのである

もちろん科学者たちは、このような認知テストの結果だけでは満足しない。彼らは、生徒たちの脳をMRIでスキャンすることも忘れていなかった(もう、こういった調査の手順はおわかりだろう。最初に能力を測るテストをしてから、MRIで脳をスキャンする)。結果は、ご想像のとおり。立って授業を受けた子どもたちの前頭葉が活発化していたのである。そこはワーキングメモリーや集中力にとって重要な部位だ。

つまり、立って授業を受けた子どもたちにも、ウォーキングやランニングなどの運動をした大人や子どもと同じ効果が見られたということだ。前頭葉が活発化して、ワーキングメモリーの能力と集中力が高まったのである。

結論はいうまでもないだろう。立ったほうが思考力は高くなる。立って授業を受けた子どもは集中力が増し、勉強の内容も頭に入りやすくなるのだ。家庭学習などで早速取り入れてみてはいかがだろう。

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