返済ペースを落とす2つの救済制度

JASSOでは「減額返還」と「返還期限猶予」という2つの救済制度を設けています。いずれも災害、傷病、経済困難、失業などの返還困難な事情が生じた場合に利用できる制度で、それぞれに年収基準があります。

減額返還とは、現状の返済額を一定期間、2分の1または3分の1に減額するもので、減額返還が適用になった期間に応じて返済期間が延長されるものです。最長15年(180カ月)の延長が可能ですから、3分の1に減額すると最長で5年分を15年かけて返済することになります。延滞している場合は利用できませんので、困ったときは早めに願い出るようにしましょう。

返還期限猶予とは、最長で10年間(120カ月)、返済をせずに先送りするものです。延滞者であっても、現在、傷病や生活保護受給中など、真に返済が困難な場合は、延滞期間のうち猶予事由に該当する期間について返還期限猶予が適用になります。猶予適用期間中は、延滞が進むことはなく、新たに延滞金も加算されません。

減額返還も返還期限猶予も、元金や利息が減額・免除されるわけではなく、返済総額は制度を利用しない場合と変わりません。1年ごとに願い出て、審査を経たうえで承認を得る必要があります。ただし、返還期限猶予の場合、災害、病気、生活保護受給中など、一部の事由については、その状態が継続している期間となります。

もしもの場合は返済の免除を受けられる

残債の全部または一部の返還免除が受けられる制度もあります。免除を受けるための条件は以下のとおりです。

①貸与を受けた本人が死亡
②貸与を受けた本人が精神もしくは身体の障害によって労働能力を喪失
③貸与を受けた本人が精神もしくは身体の障害によって労働能力に高度の制限を有する

これらの条件に該当しても、自動的に適用になるわけではありません。たとえば①の場合、制度を知らずに申請手続きをしていないと、人的保証の場合は本人に代わって連帯保証人または保証人が返済をしなくてはなりませんし、機関保証の場合は、相続人が負債を引き継ぐことになります。

②③の場合、審査により、障害の状態がJASSOの定める第1級に該当する場合は残債の全部、第2級に該当する場合は残債の4分の3以内(75%以内)の額が免除されます。

奨学金の貸与を受けるということは、完済まで長期にわたってJASSOと付き合い続けることだと覚悟を決めましょう。長い返済期間中には不測の事態に遭遇することもあります。返済に関して困りごとがあれば、状況が悪化する前に、奨学金相談センターに相談をするなり、何らかのアクションを起こしてください。

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