奨学金を利用する際には、どこに注意するべきか。ファイナンシャルプランナーの内藤眞弓さんは「奨学金は学生の可能性を広げる資金となる反面、返済できなくなったときのペナルティーがかなり厳しい。利用の際には、制度の仕組みを正しく理解する必要がある」という――。

3カ月以上延滞している人は15万人以上

大学や短大、専門学校などに進学する学生の学費や生活費を支えるのが奨学金です。中でも、日本学生支援機構(以下、JASSO)の奨学金は有利子でも上限が年3%と、普通の借入金と比較して負担が低く、大学生の2人に1人がJASSOの奨学金を利用しています(図表1)。

将来の自分への投資となり、可能性を広げてくれる奨学金ですが、注意したいのはまぎれもない借金であるということです。返済が滞った人には年3%の延滞金(※1)が課されるほか、最悪の場合、給与や財産の差し押さえといった法的措置に至るケースもあります。

しかし、JASSOの調査によると、2019年末の段階で3カ月以上延滞している人は15万2000人に上り、延滞者の50.3%が借金であることを知らずに奨学金を申し込もうとしていたそうです。延滞督促が来てから返済義務について知ったという人も8.2%います。

奨学金の返済は卒業後7カ月目からスタートします。返済能力は未知数であっても、返済義務だけは確定です。先ほどの調査では、延滞者の69.7%が年収300万円以下だというデータもあり、返済が家計に重くのしかかっている状況が想像できます。

安易な利用により将来に禍根を残すことのないよう、JASSOの奨学金とはどういうものかを解説し、損をしない奨学金戦略を考えていきます。子どもの進学に際して、奨学金利用を検討している親世代はもちろんのこと、現在返済中の方も自分の契約内容を確認しながら「転ばぬ先の杖」として、是非お読みください。

※1 以前は10%だったものが段階的に引き下げられており、2014年3月28日~2020年3月27日は5%、2020年3月28日以降は3%が適用される。

返済能力が未知数の学生でも借りられるリスク

JASSOの奨学金には「貸与型」と「給付型」がありますが、ここでは利用者が多い「貸与型」についてみていきます。

貸与型には無利子の第一種奨学金と有利子の第二種奨学金があり、それぞれに成績基準が設けられています。第一種は家庭の収入基準や学校の種類、自宅か自宅外かによって貸与月額が異なり、第二種は学校の種類や通学環境にかかわらず、2万~12万円まで1万円単位で希望月額を選択できます。第二種の場合、毎月12万円を選択すると、大学4年間で576万円の借り入れとなり、第一種と組み合わせると、さらに高額の借り入れも可能です。

住宅ローン等を組むことを考えてみてください。貸し手である金融機関は、借り手の返済能力を審査します。しかし、奨学金の場合、「教育の機会均等」という事業理念の特性上、返済能力が未知数の学生であっても貸与が行われるのです。奨学金を借りる際には、「卒業後の自分の返済能力は未知数であること」のリスクを冷静に見極める必要があります。