「記録的な在任期間によって大きな存在感を示した」

1990年代の金融バブル崩壊を予見した日本ウオッチャーとして知られる元英誌エコノミスト編集長でシンクタンク、国際戦略研究所(IISS)理事長のビル・エモット氏は筆者の取材にこう答える。

「安倍元首相の暗殺は政治的な名声や卓越性のために支払われ得る恐ろしい代償の一例だ。彼の歴史観や、メディアや学者・知識人の言論の自由に対する安倍政権の権威主義的なアプローチは、しばしば物議を醸した。しかし何よりも、その記録的な在任期間によって歴代首相よりはるかに大きな存在感と名声を得ることができた」

「安倍元首相の遺産は経済や社会の改革よりも外交や防衛政策の方が圧倒的に多いと私は考えている。安倍政権はインド太平洋全域において民主党の前任者や自民党の歴代首相よりも明確で、より断固としていて一貫した、そして何よりも積極的な日本の姿勢と評判を作り上げた」と評価する。

「国家安全保障会議の創設や、包括的かつ先進的な環太平洋連携協定(TPP)の復活と再創造の成功は特に目立つイノベーションであるが、何よりも安倍氏の精力的な外交と長きにわたる任期によって、より前向きな姿勢が作り出された。彼の外交・防衛政策こそ後世に残るものであり、新しい時代の幕開けと見なされるだろう」

「岸田首相は安倍元首相の恩恵を受けることになる」

「安倍元首相の遺産がウクライナ侵攻に対する現首相の驚くほど果断で首尾一貫した対応の基礎となっている。岸田首相が日本の防衛予算をNATO目標のGDP比2%(NATO基準で現在1.24%)にまで引き上げることに成功する可能性は非常に高い。それは実質的に安倍元首相の仕事を継続することになると同時に、その恩恵を受けることになるだろう」と言う。

しかし国内政策に対しては手厳しい。「対照的に安倍氏の国内政策は教育基本法、コーポレートガバナンス改革、過労死と搾取を防ぐための労働法改革など、日本が変化したのはごく一部であった。彼の経済政策『アベノミクス』は構造改革もなく、日銀を政府支出のための直接的な資金調達手段とした積極的な金融緩和だけで、ほとんど期待外れのものであった」

日本の危機を表すイメージ
写真=iStock.com/NatanaelGinting
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