新卒定着率、平均年収の目標を実現する唯一の方法

野島氏は2021年、『週刊東洋経済』誌上で「採用と報酬」について具体的数字をあげて語っている(12月11日号)。「新卒離職率を5%以下にして、定着率日本一の会社を目指す」「30歳で平均年収500万円弱を早期に550万円にしたい」という内容だった。どのように実現するかと尋ねた答えは、「みんなが努力すればできるけど、できなかったら10年かかるかもしれない。よければ5年でできるし、とそれは正直に言っています」。

この数字の実現のためにも、採用方法を変える。「人材育成業はやめる」の真意はそういうことだとすると、新しい採用方針は? 答えは、「この取材の質問用紙を見て、採用に使えると思った。この答えを理解してくれる子たちが入ってくれたらいいな、と。私の答えに違和感を持つ子は入らなくていいよ、と言いたい」だった。

ノジマ広報からの求めで、事前に質問案を提出していた。そこに「予算なし、ノルマなしという方針のもと、社員にどんな働き方を求め、どんな尺度で評価するか」という質問もいれた。それを見て採用について持っていた違和感を思い、変更方針を語ったということのようだ。

社員に求める努力は社長自身が体現している

ことほどさように野島氏はひらめきの人であり、ノジマは氏のひらめきで伸びてきたに違いない。「家電質販店」「全員経営理念」といった言葉の他に、店舗のモットーは「デジタル一番星」だし、M&Aで子会社化した会社には「占領軍でなく解放軍」と語るなど、野島氏はネーミングが得意だ。だから、自身をどんな経営者と思うか一言で表現してほしい。それも質問案にいれておいた。

「自分のことは僕もわからないのだけど」と言って、3つ挙げてくれた。「おかしい面白い経営者」「変人楽人」。それから、これはちょっと気まずいけどと言って「努力の達人」。「努力の手本をみんなに示してるから」と解説し、「あとは秘書に聞いてください」と照れ笑いした。

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