外部委託をしないから社員の配置場所は多岐にわたる

天気のせいだとかあいつが悪いとか、他責の人でなく自責の人。そう言う一方で、こうも語った。

「当社はできるだけ、すべての職場でアウトソーシングはしないようにしています。だからコールセンターから物流、配送と適材適所で配置するところはたくさんあります。自分の技量や分をわきまえて、その中で努力できたら日本で一番幸せ、この会社に勤めて幸せ。そう思ってもらいたい」

アイデアマンでなくても生きる道はある、ということかと確認した。

「人は石垣と武田信玄も言っていますが、小さな石もあれば大きな石もあって、奥の方で薄い石が支えたりして、それが全部噛み合って何百年と残る石垣になる。人を生かすというのが、非常に重要と思っています」

ノジマの採用方針を見直すと話した野島社長
撮影=西田香織
ノジマの採用方針を見直すと話した野島社長

ノジマはこのところの新卒採用で、自社を「人材育成会社」「人材育成業」と紹介してきた。予算管理でなく、人を生かすことで業績を伸ばしてきたからこその人材獲得戦術だろうが、野島氏はこれへの違和感があるようだ。

「一番は人づくりだと思ってきたんだけど、ちょっと頭の中が変わっちゃった。それよりも目利きが最初だと。いくら一生懸命育成しても、合わない人を入社させたら会社はよくならない。そのことがやっとわかった。だから『人材育成業』というのはやめようと思います」

「人材育成業」の看板は下ろし、努力できる人を採用

採用数が増え、ミスマッチ人材も増えたということかと尋ねたら、「結局、僕は戦後の教育が好きじゃないんですよ」と返ってきた。戦前の先生は「あんちょこ」を見て話さず、自分の体験をもって教えていたから生徒の心に内容が入っていった。ノジマでは、社内スピーチで紙を見るのは禁止している。丸暗記でなく、自分の考えを自分で話すことが大切だから、と。

「あんちょこ、つまりマニュアルがあれば楽です。だけど僕は、それは西洋流の奴隷だと思う。だからうちは極力マニュアルは少なくしているし、ノルマも与えない。つまりうちの会社は、日本で一番難しい会社なんです。だから自ら伸びる人間、出る杭を応援する。伸ばせる環境を作る。『人材育成業』はやめようと思っています」

このフレーズで、「うちに来ればだれでも良くなる」というメッセージを与えてしまった。努力できない人には居づらい会社だが、努力できない人も採用してしまっていた。だから『人材育成業』という打ち出しはやめるが、それでどういう影響が出るかはわからない。とにかくこれからは「努力できて、努力すると報われると信じる人を採用する。今も報われるようにしていますが、もっと報われるようにします」。