例年1~3月は会社を辞める社員が続出する。2022年は35歳以上の求人も増加する見通しだ。人事ジャーナリストの溝上憲文さんは「コロナ禍のテレワークの影響もあり、最近は、辞める兆候を見せないまま辞める社員も多い。中には高い評価を得ている社員もいるが、体育会系を筆頭とした上司との折り合いがうまくつかずメンタルが不調になって退職するケースが目立つ」という――。
辞表とスケジュール帳のための日本語の手紙
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1~3月は例年“退職者ラッシュ”、その元凶とは誰か?

1月から3月は1年の中で離職・転職する人が最も増える時期だ。年末に次年度の要員計画が決定し、年度スタートの4月入社に向けて採用が活発になる。

一方、転職希望者は12月のボーナス支給日までは退職の意思を示さず、もらうものはもらって1月以降に退職届を出す人が多い。

広告業の人事課長は「会社を辞めたいという人は日頃の態度を見ていれば何となくわかるものだが、コロナ禍のテレワークで見えづらくなり、上司も気づきにくい」と警戒する。

加えて2022年は例年になく求人が増加すると人材サービス各社は予測している。エン・ジャパンの「転職マーケット予測」によると2022年の「35歳以上」のミドル人材を対象とした求人募集が増加すると回答した転職コンサルタントは80%に上る。

また、dodaの「転職市場予測2022上半期」によると、1~6月の転職市場は「14の業界・職種のほぼすべてで求人が増加する見込み」だとしている。とくに1~3月は「2020年~2021年にかけてコロナの影響で採用活動を抑制した反動もあり、転職活動のチャンスが広がる」と予測する。

最近増えている「びっくり退職」「ニコニコ退職」

しかしこうした動きは優秀社員の流出を防止したい企業にとっては脅威だ。退職届を出す前になんとかして引き留めたいところだが、最近は辞めそうな兆候をまったく示さないまま突然、退職届を出す「びっくり退職」が増えているという。

サービス業の人事部長はこう語る。

「仕事もそれなりにこなし、ちょっと注意をしても『わかりました』と素直に答え、周囲にも気を遣いニコニコしながら仕事をしている。周囲との軋轢もなく、上司の評価も悪くないのに突然『辞めます』と退職届を出してくるので上司も驚く。理由を訊くと『自分がやりたい仕事が見つかりましたので』と、あっさり言う。うちでは“ニコニコ退職”と呼んでいるが、そういうケースが増えている」

びっくり退職の背景のひとつは転職しやすい環境もある。

昔に比べて今はスマホの転職サイトに簡単に登録できる。スカウト機能でオファーがかかれば有休を使って面接にも行けるし、テレワーク中ならオンライン面接も可能であり、上司や会社に気づかれる心配は微塵もない。