なぜ日本の景気は良くならないのか。今年7月、イノベーション研究の国際賞「シュンペーター賞」を受賞した早稲田大学商学学術院の清水洋教授は「日本の企業からイノベーションが起こらなくなっている。『45歳定年制』には、日本企業をよみがえらせ、日本の景気を良くできる可能性がある」という――。(後編/全2回)
オフィスでポケットに手を入れ外を見ている老齢のビジネスマン
写真=iStock.com/Edwin Tan
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私が45歳定年制に賛成する3つの理由

サントリーホールディングスの新浪剛史社長が45歳定年制度を提案し、大きな注目を集めました。そこで前回は、年功序列や終身雇用制度を前提とした雇用や昇進の方法(社内の労働市場)が90年代後半から機能しなくなり、働く人たちがそれぞれ上手く動機づけられていないことを見てきました。

45歳定年制は、これに対する簡単な解決策というわけではありません。しかし、問題のいくつかは解決できるかもしれません。特に、イノベーションという観点からすると、大きく3つの賛成すべき点があるでしょう(ちなみに、私も45歳で移籍しました)。

1つは、外部の労働市場のメカニズムを上手く活用できるという点です。

これまでの日本企業は、内部労働市場を上手く活用して、働く人のコミットメントを引き出してきたと言えます。しかし、それが上手く機能しなくなったのです。45歳定年制度は、労働市場のメカニズムをもう一度、インセンティブとして機能させるきっかけになるかもしれません。

45歳定年制度が導入されるとすれば、45歳で定年を迎えた後、悠々自適な生活を送るという人はほとんどいないでしょう。定年したらその後は働かなくて良いと思っているとすれば、大きな誤解です。

45歳の定年後は、その後、就業機会を探すということになります。同じ会社で再び働く人もいるでしょうし、他の就業機会を探す人もいるでしょう。つまり、実質的には45歳の時点で一度、しっかりと評価をしますよということです。

ということは、45歳までに自分の市場価値を上げておかないと、賃金が下がる、あるいは職を失うことになるかもしれません。現在働いている組織内での評価よりも、市場価値の方が上がっていれば問題ありません。しかし、市場価値が組織内での評価よりも低い人は、スキルアップしておかなければなりません。