社外から新しい人材を取り入れ、適材適所が進む

2つ目の理由は、外部の労働市場を活性化することができるという点です。

45歳定年制度が多く導入されると、外部の労働市場に出てくる優秀な人材も増えてきます。現在の会社では自分の実力が活かしきれない人も多くいるでしょう。新しい領域で活躍する人もでてきます。

高校や大学を卒業して就職した会社が、自分の能力が最も発揮できる場所だとは限りません。おそらくそうではないことが大半でしょう。企業のビジネスも変化しますし、やりたいことや自分のスキルが変わるかもしれません。

45歳定年制度は次の活躍の場を提供する機会になり、社会的な適材適所を促進することにつながります。

もちろん、市場価値が高まりそうな仕事ばかりする、社内では重要だけれども市場では評価されにくいものを避ける傾向はでてくるでしょう。スキルの形成も、その社内でしか通用しないようなモノ(例えば、社内の独自のビジネスの進め方や職場での人間関係など)を吸収するための投資は少なくなり、どこの組織でも重要になるような汎用性の高いスキルを吸収するための投資は多くなるでしょう。

それでも上手く機能しなくなった内部労働市場に、スキルアップのインセンティブを埋め込むことができるでしょう。異なる業界にいるビジネスパーソンでも共通言語で話ができる余地が大きくなり、新結合も期待できます。

組織にしがみつく人が増えるとイノベーションは起きにくい

3つ目の理由は、新しいチャレンジがしやすくなるという点にあります。これが最大のポイントです。45歳で定年を迎えるにあたって、多くの人は次の就業先を探すことになります。そのために、次の良い就業先を見つけるためには、自分の市場価値を上げておく必要があります。

典型的にまずいのは、現在働いている組織での評価の方が、自分の市場価値よりも高い人が多いような組織です。このような場合には、現在の組織にしがみつく人が多くなります。そのような人たちは、その組織の中で新しい試みをしようとする人たちにとって、大きな抵抗勢力になります。

新しいチャレンジには失敗もあるかもしれません。新しい試みをして、失敗に終わると、困ってしまうのは、現在の組織にしがみつかなくてはならない人たちなのです。できるだけ(自分たちがいる間は)、多少の先細りがあったとしても、現在のままの体制でいたいわけです。新しいビジネス機会が訪れたときにも、チャレンジしにくくなります。もしも、組織を離れてしまい、新しいビジネス機会の追求に失敗した場合、今よりも低い給与で働かなくてはならないからです。

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