新しいチャレンジに友好的な組織に生まれ変わる

現在働いている組織での評価の方が、自分の市場価値よりも高い場合は、その人たちにとっても実は心地よくないでしょう。自分の仕事や職場が好きではない場合でも、現在の職場にしがみつかなくてはいけません。これは、精神的に良くありません。

反対に、現在の組織からの評価よりも、市場価値の方が高い人は、「自分は他で良い就業機会はいくらでもあるけど、今の仕事(あるいは職場)が好き」という人です。こういう人が多い職場は健康的でしょう。もし失敗したとしても、市場価値の方が高い人はいくらでも良い条件のところに移れます。だからこそ、チャレンジにも好意的です。

自分がコミットしたいと思ったものに出会った時に、思い切ったチャレンジができます。新しいビジネス機会を追求したいと思えば、すぐにでもできるでしょう。失敗したとしても、自分の市場価値に従って、新しい就業機会を見つけることはそれほど難しくありません。

取引に成功し握手するビジネスマン
写真=iStock.com/Charnchai
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このように自分の市場価値が高い場合は、「他の職場でも十分仕事はできるし、なんならそちらの方が給与は高い。だけども、今の仕事や職場が好きだから、そこで仕事している」ということになります。この方が精神的にも良いはずです。また、働く人たちにそう思わせることができるかどうかが企業のトップ・マネジメントにとっては大切です。

45歳定年制だけを導入してはいけない

とはいえ45歳定年制度は、現在の状況で導入しても上手く機能しない、あるいはあまり良くない側面が出てしまう恐れがあります。補完する制度が必要です。

45歳定年となれば、より良い就業機会を見つけて、所得が上がる人も出てきます。一方で、次の就業先を上手く見つけられない人もでてくるでしょう。賃金が大幅に下がってしまう人もいるかもしれません。所得の分散が大きくなることが見込まれ、「弱者を生み出す強者の論理」と批判する人もいるでしょう。

だからこそ、政府による再分配の制度の設計はとても(とても、とても)大切になります。これまでは、企業が人材を抱えることによって、実質的に再分配の一部を肩代わりしていたと言っても過言ではありません。まさに、企業は社会の公器だったのです。やや公器でありすぎたのかもしれません。

グローバルでは、そのような政府の肩代わりをしていない、むしろ政府に研究開発の一部を肩代わりしてもらっている企業との競争があります。少し、企業の肩の荷を下ろしてあげることが必要です。