「安心安全な大会」が大きく揺らぎだした

菅首相は、まさしく壊れたテープレコーダーばりに「安全安心な大会を実現する」と繰り返して来た。ところが、その「安全安心」も大きく揺らいでいる。

選手団などからPCR検査で陽性になる人が続出。7月17日には15人、18日には10人が確認された。東京晴海の選手村の中でも感染者が確認されている。菅首相が国会答弁で繰り返した「国民と大会参加者の導線は完全に分ける」という施策も、「いい加減」であることが次々と判明している。到着ロビーでの動線が一般客と分離されておらず、トイレも同じだったことが野党の追及で明らかになった。また、ホテルに宿泊している経過観察中の記者などが15分以内ならコンビニに買い物に行けることになっていたことも分かった。ルールを破って外出している人も多く出ているという話も流れている。

国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長も小池百合子都知事に会った際に、「日本の皆さんのリスクはゼロ」と発言。参加者から感染者が出ている中での「根拠なき発言」にネット上では大炎上する事態になっている。

2020 年東京夏季オリンピック
写真=iStock.com/winhorse
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組織委が赤字を払えなければ、都民にツケが回る

「菅首相は選挙しか興味がない」と自民党のベテラン政治家は言う。「会って飯を食っても選挙の話しかしない」と言うのだ。菅首相は、緊急事態宣言を出すかどうか、オリンピックをやるかどうか、無観客にするかどうか、もすべて「選挙に有利に働くかどうか」で決めてきたのかもしれない。菅首相からすれば、ワクチン接種を進めて「ゲーム・チャンジャー」にして、オリンピックを実施し、成功裏に終わらせれば、内閣支持率は一気に回復すると期待したのだろう。だが、残念ながら菅首相の思うようには進んでいない。

時事通信が7月16日に発表した世論調査(調査期間7月9日から12日まで)によると、菅内閣の支持率は29.3%と発足以来最低を記録、「危険水域」とされる20%台に沈んだ。不支持率も49.8%に急上昇した。これに続いて、ANNが7月19日に実施した世論調査でも内閣支持率が29.6%に留まった。ワクチン接種の進み具合について66%が「うまくいっていない」と答えており、菅首相の賭けが外れていることを示している。

「競技が始まれば、日本選手の活躍に熱狂して、やって良かったというムードに変わるんじゃないか」と幹部官僚は言う。だが、短い祭典が終われば、そのツケをどう処理するか、という問題に直面する。

無観客となったことで、観光収入など経済効果はほとんど見込めない。国立競技場の建設や道路工事などにすでに3兆円以上が使われたが、チケット収入もなく、赤字が残ることになりそう。赤字は組織委員会が負担できなければ東京都が被ることになっており、結局は都民に税金の形でツケが回る。各国の首脳などの来日キャンセルが続いており、いわゆる五輪外交のメリットもない。新型コロナ対策の経済政策もあり、国の借金は1200兆円を超えている。国民の大きな犠牲を横目に、オリンピックがいよいよ始まる。

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