3月の訪日外客数は初めて300万人を突破

日本全国各地に外国人観光客があふれている。最近では日本人でも行かないような穴場の観光地でも外国人の姿を見るようになった。

JNTO(日本政府観光局)の推計では3月1カ月に日本を訪れた「訪日外客数」は308万1600人。コロナ前の2019年7月に記録した299万1189人を大きく上回り、初めて300万人を突破、過去最多となった。これまでのパターンだと、1年で最も訪日客が多いのは夏休みシーズンの7月で、次いで桜の季節である4月、春節でアジアからの来日数が増える2月(年によっては1月)だった。昨年まで桜の開花が一気に早まっていたこともあるためか、今年は3月で一気に最多を更新した。

国内外の観光客でにぎわう浅草寺の雷門=2024年2月11日、東京都台東区
写真=時事通信フォト
国内外の観光客でにぎわう浅草寺の雷門=2024年2月11日、東京都台東区

その後も観光地から外国人の姿は減っていないので、おそらく4月も最多を更新、今年の7月には記録的な訪日数になると予想される。年間でも、2019年に記録した3188万人を更新する可能性が強まってきたうえ、コロナ前に政府が目標として掲げていた年間4000万人も一気に視野に入ってきた。3188万人を記録した2019年では、訪問外国人数が最も多かったのはフランスの8932万人で、日本は12位だった。ウクライナ戦争の影響で欧州への観光客が伸び悩んでいることや、中国やトルコなどベスト10の国々も地政学的に訪問者が増えにくい状況が続いている。そうした中で日本は訪問したい国のトップに選ばれるなど、世界有数の観光国の仲間入りをすることになった。

2023年の旅行消費額は5兆2923億円で過去最高

もちろん、訪日客が急増している背景には猛烈な「円安」によって、海外から来る人たちにとって、日本が「格安」になっていることが大きい。コロナ対策で各国の政府・中央銀行が大規模な資金供給を行ったことで、世界は急速なインフレに見舞われた。結果、各国の国内物価が大幅に上昇していることも、日本の物価を極端に安く見せている。テレビなどで流れる訪日客へのインタビューでも異口同音に「安い、安い」という発言が聞こえてくる。

国内消費の頭打ちが続いてきた日本にとって、こうしたインバウンド客がどんどん消費してくれることはありがたいことに違いない。2023年暦年の訪日外国人の旅行消費額(速報)は5兆2923億円と、ピークだった2019年を10%上回り、過去最高になっている。日本国内での消費というとコロナ前は中国人観光客の「爆買い」が大きく目立ったが、最近は欧米人もこぞって買い物にいそしんでいる。それほど、本国との価格差が大きくなっているのだ。日本にとっては消費を押し上げる大きな追い風であることは間違いない。