「八百屋」が「ショッピングモール」になった状態

近年は、さらに「LINEを止めにくい」状況が拡がりました。最大の理由は、2012年7月から始まった、LINEの「プラットフォーム化」。すなわち、LINEが単なるコミュニケーションアプリの枠を超え、外部のさまざまなコンテンツを展開する広場になったこと。

いわば、「八百屋」を本業としてスタートした小さな店が、やがて面積をドンと増やし、書店や衣料品店、雑貨店、飲食店など複数の業種が入居する「ショッピングモール」へと拡大したようなイメージです。アップルも、今や「App Store」や「iTunes」において、自社製品だけでなく他社のアプリやコンテンツ(音楽や動画など)を販売していますよね。

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LINEも同じ。2012年に「プラットフォーム宣言」をした後は、友達や知人同士で、ゲームや占い、音楽、クーポンなどのサービスをともに利用できるようにしたほか、アーティストのライブ配信を無料で視聴できる「LINE LIVE」やLINE経由でショッピングすることでポイントが貯まる「LINEショッピング」など、さまざまな外部パートナーとの提携を推進してきました。これらを日常的に利用していれば、ますますその「モール(LINE)」から離れられなくなるはずです。

さらに強力なサービスが、2014年12月にリリースした、モバイル送金・決済の「LINE Pay」。LINEのアプリを通じ、ユーザー間での送金・割り勘機能や、提携店舗などでの決済を簡単に行えるサービスです。18年12月の時点で、すでに国内登録ユーザーの数は3000万人を超えています。今後、日本でも急速に電子決済が進むなかで、LINE Payをより日常的に利用する男女が増えれば、従来以上に「今さらLINEを止められない」状況になるでしょう。

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