「アイテムをもらったから返さなきゃ」と思う理由

その後に登場した、ゲームのアイテム(おもにゲームを有利に進めるために必要な武器やパワーなど)も同じ。取材した主婦や若者からは、「この前、LINEゲームのアイテムをもらっちゃったから、私からも買って返さなきゃ」といった声や、「一方的に、こっちばっかりがゲームアイテムもらいっぱなしってわけにいかないし」といった声があがりました。

なぜ彼らは「送り返さないと悪いかな」と感じたり、「お返しに、スタンプやゲームアイテムを買おう」と考えるのでしょうか? 理由の一つは、マーケティングや行動心理学で言われる「返報性の原理」にあるのではないか、と考えられます。

たとえば、皆さんが今から2カ月前、ある異性と交際を始めたとします。初回のデートは、お洒落なイタリアンレストランで、相手が全額ご馳走してくれた。皆さんはおそらく「悪いな」と思い、「次はこちらが奢るべきかな?」と迷うのではないでしょうか?

これこそが「返報性の原理」です。人は、誰かに何らかの施しを受けた際、「自分もお返しをしなければ」とつい感じてしまう。よく例にあがるのは、スーパーや百貨店のデパ地下で行われる「試食・試飲」や、通販の「サンプル無料プレゼント」。売る側が、タダで何かを提供したり、してあげたりすることで、相手に「悪いな」「お返しに何かしなきゃ」と感じさせ、「一度ぐらい買ってあげようか」と購買を誘う手法です。

自分だけ送らなければ「失礼」と感じて購入する

LINEでも、相手から有料のスタンプが送られてきたり、プレゼントされたりすれば、「知り合いのあの人が、私のために尽力・出費してくれたのだから、自分もすべきでは?」と考えやすい。しかも、やり取りするのがクローズドな環境なので、「周りのみんなが有料のスタンプを送り合っているのに、自分だけが送らなければ『失礼』だし『仲間はずれ』になるかもしれない」……。それぐらいならと、時として有料のスタンプも買うでしょう。

ちなみにこれは、デートでも同じ。男性に、「牛窪さん、初デートから公平にワリカンでいいですよね」と相談を受けることも多いのですが、私はよくこう答えます。

「うーん、悪くはないけど、次のデートにつながる可能性は低くなりますよ」

なぜなら、初デートで奢ってあげれば、返報性の原理によって、相手は少なからず「次は、私が奢るべきかな」と考えやすい。奢られた女性は、おのずと次のデートを「断りにくく」なるのです。