経団連会長として問うべき提言は「節電」のはず

太陽光発電の場合、平均の稼働率は13%程度。風力発電でも19%ほどしかない。あくまでこれは平均値だから、太陽がガンガンに照りつけたり、風が吹き荒れると設備の発電能力が全開になって100%を超えてしまう。プラス80%に相当する電力が一気に放出されたらグリッド(電力網)はこれを吸収できない。電力ネットワークというのは、地域内の電力の需要量と供給量が一定に保たれてないと不安定化してしまう。それがサージ(過電圧)という現象を引き起こして、ブラックアウト(大停電)につながるのだ。

再生可能エネルギーもコストや安定供給などの課題があって、活用に限界がある。他方、原発は国民からNOを突きつけられている。そうした認識に立って「日本の電力は危機に直面している」(中西会長)というのなら、経団連会長として政府と国民世論に問うべき提言は「節電」だと私は思う。日本のような人口減社会は放っておいても少しずつ電力使用量が減っているのだが、国全体が必死で節電することによって電力使用量は半分で済むようになる、と私は思っている。

たとえば電力使用量が非常に大きい工業用、商業用のモーターやコンプレッサー(気体を圧縮して送り出す装置のこと。エアコンやコンビニのショーケースなどに使われている)は、省エネ研究が実用化の段階に入って、少なくとも30%くらいの省電力化の見通しが立っている。車もPHV化することによってガソリン消費量は半減する。

日本全体の発電量は15%程度抑えられる

各家庭においてもすべての電球をLED化したり、住宅の断熱化を義務化すれば、大幅な節電ができる。また日本の電力網は新潟県の糸魚川と静岡県の富士川を境に電源周波数が東は50ヘルツ、西は60ヘルツに分かれていて、この糸魚川ラインをまたいで融通できるようにするための変換設備の合計容量は120万キロワットで、実際に使えるのは40万~55万キロワット程度しかない。これを改善して時差に応じて電力を融通しあえる全国的な電力ネットワークを築けば、日本全体の発電量は15%程度抑えられることがわかっている。

「産業界の50%節電は、私が責任と覚悟を持って仲間に呼びかけ、車などの移動体も含めて取り組みます。ついては国民の皆さんにも同じく50%の大胆な目標を持って節電に取り組んでいただきたい。そして政府には家庭のLED化や断熱化を助成していただきたい」――。私が経団連会長ならこう提言する。

(構成=小川 剛 写真=時事通信フォト)
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