原発を再稼働するためには、原子力規制委員会が自分たちも怯えながら作り上げたさまざまな安全基準を全部クリアしなければならない。そのためのコスト、要するに安全対策費は少なくとも5000億円はかかる。5000億円といえば新設の原子炉一基の値段に相当する。

東芝が吐き出した米国原発大手ウエスチングハウスが開発した最新の加圧水型原子炉は「AP1000」と呼ばれる。この原子炉は炉心溶融を引き起こす崩壊熱がクールダウンするまで補助装置が自己熱で回り続ける仕組みになっているので、福島型の重大事故は起こさないと言われている。約1100メガワットの出力を叩き出すAP1000の値段が5000億円。中国はAP1000型の原発稼働を進めている。

日本では原発の新設なんてまったく考えられないし、計画が止まっている原発の建設再開もほぼ不可能。あと数年もすれば、中国のほうが先輩になっているだろう。

福島原発事故の説明責任を果たさない政府

本連載で何度も言っているが、私は基本的には原発推進論者である。福島の反省を踏まえて、「こうすれば安全は確保できる」というレポートも書いているし、再稼働のための『原発再稼働「最後の条件」』(小学館)も出版している。原発を推進したければ推進する方法はあると思っているが、運用責任者であるはずの日本政府に信頼が置けない。

再び原発を推進する大前提は、福島の原発事故を徹底的に究明して、事故の検証から導き出した安全対策を実行し、再稼働の条件を明確化することだ。地元や国民に対する情報開示は当然のことだが、政府は福島の原発事故の説明責任をいまだに果たしていない。

物理的な安全対策だけではなく、それでも事故が起きた場合に備えて、組織的な危機管理体制も整えておかなければならない。重大事故状態に陥ったときに誰がどういう手順で避難指示を出すのか、自衛隊の出動命令を出すのか等々、事故に迅速に対応する指揮命令系統を確立する必要があるのだ。