現実には首相官邸が司令塔になるべきで、私は何度も自民党に説明に行って相応の機関を官邸に設置するように進言したが、まともに取り合ってもらえなかった。規制委員会は事故が起きないようにする組織だから、事故が起こったときには、それとは独立した専門家集団が官邸で判断、指揮などを首相に進言しなくてはならない。福島第一のときには保安院の院長が機能不全になり、私がメルトスルー(溶融貫通)している、と官邸に説明に行っても「そんなはずはない」と叫んでいた。

また、「万が一のときはこうしましょう」という話を詰めなければいけないのに、担当したある国会議員(原発が多い自治体選出)は「万が一なんて選挙区で言ったら、私は(選挙に)受かりません。嫌です」と議論を拒否した。万が一の事故が起きたときに、こんなアホばかりの政府、首相官邸が司令塔の役割を果たせるわけがないし、住民や国民の不安を拭えるはずもない。

原発と再エネ以外の電力問題解決策

中西会長は「原子力抜きでパリ協定は守れない」とも語っている。パリ協定は2015年にパリで開催された第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で採択された気候変動抑制に関する多国間の国際協定だ。パリ協定を批准している日本は「2030年度までに温室効果ガス排出量を2013年度比26%減」「2050年までに80%減」などの中長期目標を掲げている。

福島の事故以降、原発が停まった日本では石油やLNG(液化天然ガス)などの化石燃料の比重が8割を超えていて、パリ協定の目標達成は厳しい状況が続いている。だからといって協定遵守を理由に原発の再稼働や運転期間の延長を求めるのは、財界トップとしてやはり無神経と言わざるをえない。

パリ協定を念頭に置くなら、まずやらなければいけないのは脱化石燃料である。そして原発に頼れない国内情勢を鑑みれば、再生可能エネルギーの比重を高めるしかない。

しかしながら、再生可能エネルギーの安定活用にはまだまだ技術的課題が多い。一番安定しているのは電力量の7%を占める水力発電だが、日本の水力は開発され尽くしていてもはや余力はない。また地熱発電で日本は世界3位のポテンシャルを秘めているが、候補地が温泉の近くだったり、国立公園の中にあったりするので、反対運動や規制が絡んで思うように開発が進まない。

再生可能エネルギーのチャンピオンとして期待されているのは太陽光と風力だ。しかし、どちらも「お天道様任せ」「風任せ」というウイークポイントがある。