そこで最後に日本の株式市場へのマネーの流れについて考えてみたい。「株価は1株当たりの利益とPER(株価収益率)で決まる」というセオリーがある。数式で表すと「株価=1株当たり利益×PER」となる。

海津さんによると、日経平均株価が3万8915円の最高値を付けた1989年末の市場全体のPERは60倍超。確かにこれは異常値といえる。それに対して現在のPERは15倍でほぼ適正水準である。一方で、海津さんが指標として活用しているラッセル野村の大型株ユニバースに採用されている企業の利益を見ると、89年の約20兆円に対して19年度の予想が約55兆円である(図5参照)。

「PERが4分の1の適正水準でも、企業の利益が4倍の規模になれば、株価は同じ水準になってもおかしくはありません。20年前後に日経平均株価は2万円程度まで調整することもあるでしょう。しかし、今後の成長性を考えると、55兆円の企業利益が将来80兆円規模に拡大していく可能性が十分に高いと見ています。その結果、日経平均株価は25年までに3万円の大台を回復し、30年までに最高値を更新するのではないかと考えています」と海津さんはいう。

投資の理論などをきちんと勉強するのと同時に、日本を含めた世界的な大きなマネーの流れを掴み、住宅や老後の資金などを賢く運用して、少しでも増やしていきたいものである。

海津政信
野村證券 金融経済研究所 シニア・リサーチ・フェロー兼アドバイザー
1975年、野村総合研究所入社。その後、野村證券の金融研究所の副所長兼企業調査部長などを経て、12年から現職。
 

吉川 洋
立正大学教授
1951年生まれ。東京大学経済学部卒業後、ニューヨーク州立大学助教授、東京大学大学院教授などを経て現職に。『人口と日本経済』など著書が多数ある。
 

村上由美子
経済協力開発機構東京センター所長
スタンフォード大学大学院国際関係学修士課程修了後、国際連合、ゴールドマン・サックス証券勤務などを経て現職。著書に『武器としての人口減社会』がある。
 
(撮影=加々美義人)
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