それだけではない。立正大学教授の吉川洋さんと経済協力開発機構の東京センター所長を務める村上由美子さんは、「世界の先頭を切って高齢化社会を迎えた日本で進化してきた介護ビジネスは、これから深刻な高齢化を迎える中国、韓国、タイなどのアジア諸国で大きなマーケットが生まれます。すでに日本で始まっているAIやロボットを導入した介護は、省力化という点で各国からの引き合いが高まるはずです」と口を揃えていう。

また、イノベーションは何も生産技術の領域にとどまらず、需要創造という領域でも起きる。そこで吉川さんが注目しているのが「大人用紙オムツ」だ。少子化で乳幼児向けの需要が減る一方で、寝たきりの高齢者向けの需要を喚起し、17年の大人用紙オムツの市場規模は約880億円の規模に育ってきている。この介護分野でさらにイノベーションが生まれ、経済成長の原動力になっていくだろう。

19年から20年にかけて予想される米国経済の調整などによって、日本の景気減速も避けられそうにない。しかし、海津さんは「確かにいったん鈍化するものの、25年頃にかけて経済は再び活発化していくでしょう。17年11月に野村證券がまとめた『日本経済中期見通し2018』では、メイン、ダウン、アップの3つのサイドでのシナリオを示しましたが、私はアップサイド・シナリオで進み、21~25年の名目GDP1.5~2%の成長も可能だと見ています」と話す。

その中期見通しで興味深いのが、景気循環など一時的な要因を除いた真の実力を示す「潜在成長力」の今後の予測である。潜在成長力は資本と労働の投入量と、広くはイノベーションを意味するTFP(全要素生産性)の3つで構成される。図4にあるように21~25年の潜在成長率は0.9%。労働人口の減少によって労働投入はマイナスが避けられない分、TFPの伸びが補っていることが見て取れる。