「災害級」の猛暑が続いている。個人にとっては耐えられない暑さだが、日本経済にとってはホクホクのプラス材料になるという説がある。第一生命経済研究所の永濱首席エコノミストによれば、この猛暑には短期的に実質GDPを3000億円以上も押し上げる効果があるという。ただし、「猛暑特需」のあとには「反動減」もある。トータルではどうなるのか。永濱氏の分析を紹介しよう――。

「ダンボールの販売数量」も大幅増加するワケ

今夏は「災害級」の猛暑が続いている。本稿では、猛暑が日本経済に与える影響を考察したい。結論としては、猛暑は暑さを凌ぐためにお金を使わざるを得ないため、短期的にはプラスだが、食料品の値上げやその後の反動減などのマイナスがあるため、トータルとしては大きな影響はなさそうだ。今回は、猛暑特需と反動減のメカニズムについて解説したい。

過去を振り返ると、2010年が観測史上最も暑い夏と呼ばれている。当時の気象庁の発表によると、6~8月の全国の平均気温は平年より1.64℃高くなり、1898年の統計開始以来、最高の暑さとなった。この猛暑効果で、2010年6月、7月のビール系飲料の課税数量は前年比2カ月連続プラスとなった。同様に、コンビニ売上高も麺類や飲料など夏の主力商品が好調に推移したことから、既存店前年比で7月以降2カ月連続プラスとなった。

また小売業界全体を見ても、7月の既存店売上高伸び率は猛暑の影響で季節商材の動きが活発化し、百貨店、スーパーとも盛夏商材が伸長したことで回復が進んだ。家電量販店の販売動向もエアコンが牽引し、全体として好調に推移した。

2010年は小売業界以外にも、猛暑の影響が及んだ。外食産業市場の全店売上高は7月以降の前年比で2カ月連続のプラスとなり、飲料向けを中心にダンボールの販売数量も大幅に増加した。また、ドリンク剤やスキンケアの売上好調により、製薬関連でも猛暑が追い風となった。

さらに、乳製品やアイスクリームが好調に推移した乳業関連も、円高進行による輸入原材料の調達コストの減少とも相まって好調に推移した。化粧品関連でも、ボディペーパーなど好調な季節商材が目立った。一方、ガス関連は猛暑で需要が減り、医療用医薬品はお年寄りの通院が遠のいたことなどにより、猛暑がマイナスに作用したようだ。

冷菓や日傘・虫よけも、猛暑の年には好調

以上を勘案すると、今年の猛暑も幅広い業界に影響が及ぶ可能性がある。事実、過去の実績によれば、猛暑で業績が左右される代表的な業界としてはエアコン関連や飲料関連、目薬や日焼け止め関連のほか、旅行や水不足関連がある(図表1)。そのほか、冷菓関連や日傘・虫よけ関連といった業界も、猛暑の年には業績が好調になることが多い。

飲料の販売比率の高いコンビニや猛暑による消費拡大効果で、広告代理店の受注も増加しやすい。缶・ペットボトルやそれらに貼るラベルを製造するメーカー、原材料となるアルミニウム圧延メーカー、それを包装するダンボールメーカーなどへの影響も目立つ。

さらには、ファミリーレストランなどの外食、消費拡大効果で荷動きが活発になる運輸、猛暑で外出しにくくなることにより販売が増える宅配関連なども、猛暑で業績が上がったことがある。

一方、食料品関連やガス関連、テーマパーク関連、衣類関連などの業績には、過去に猛暑がマイナスに作用した経験が観測される。