2014年4月に社長になる前に、「GPS」や「G10」の担当役員を務めた。GPSは、カーナビなどに使われる全地球無線測位システムのことで、CEOだった現・名誉会長がマーケティング不足を指摘してつくった新組織。事業部門ごとにマーケティングはしているが、全体の位置づけを客観的にみる部署がほしい、との判断だ。その立ち上げを、担う。

G10はグループ10の意味で、10程度の新規事業の立ち上げに取り組むチームとして、自分で創設した。G10で植えた種子を育て、ライフサイエンス、検査・計測、電子印刷の3つに絞り、前の2分野が独立した事業室になっている。

これらの担当は、「自分たちはいいものをつくっている。いいものをつくれば売れるはず」という技術陣の内向き志向が続き、潮目の変化に乗り遅れた40代の経験が、土台となっている。技術陣が「うちの技術はいい」とプライドを持つことは、大事だ。だが、過信すると「井の中の蛙」となり、他人の言うことを聞かなくなる。自分たち非技術系の人間がアンテナを張っておき、「こういったビジネスも、ちょっとやっておこうよ」ということが、必要だ。

それには、「縁尋機妙」が生きてくる。一方で技術、他方では顧客ニーズが変わっていくなかで、人脈の価値は大きい。ただ、机にしがみついていては生まれない。だから、事業部長らには「どんどん海外へいけ」と言っている。

メールやSNSで用事を済ませてしまう人が増えたが、若い人にはメールよりも電話で話す、できれば実際に向き合って話し、話しかけるべき適切なタイミングや深さを身に付けてほしい。その「人と人との間合い」をつかむことこそ、「縁尋機妙」の源泉だ。

SCREENホールディングス 社長 垣内永次(かきうち・えいじ)
1954年、和歌山県生まれ。78年天理大学外国語学部(現・国際学部)卒業後、岩倉組(現・イワクラ)入社。81年大日本スクリーン製造(現・SCREENホールディングス)入社。2005年執行役員、メディアテクノロジーカンパニー社長、11年取締役、14年4月より現職。
(書き手=街風隆雄 撮影=門間新弥)
【関連記事】
成功する人は「円」より「縁」を重視する
"iPhone充電コネクタ変更"の密かな狙い
40歳女性取締役「後悔しない自分の進路」
1人の突破力から、ブランドはつくられる
会いたくなくても会うから、人脈ができる