「横浜市に譲歩する必要はないかもしれない」

これに対し、昨年8月に、県立がんセンターの放射線治療科部長は「そもそも横浜市大に多くを期待しておらず、重粒子線治療装置が完成するまでにまだ時間があるので、幅広く人材を確保する方が良いとの考えをもっているので、横浜市大からの派遣に気を使って、横浜市に譲歩する必要はないかもしれない」と県の担当者に報告した。

県の担当者はさらに、横浜市と大学が大学院のスペースとして345平方メートルを要求しているのに対し、県は80平方メートルしか用意できないとの理由も添えて、県知事に報告した。これを受けて県知事は横浜市と大学の要望を拒否したのである。

その後、重粒子線治療施設開設準備室長であった放射線治療科部長は、開院の6カ月前となる平成27年6月までに、実施責任医師の資格を持った医師を1人も育成していなかった。重粒子線治療施設が開院する平成27年まで約6年あり、平成24年には厚生労働省から実施責任医師の条件が示されていたにもかかわらずである。

パワハラ行為で診療の進捗は60~70%に

この状況を見て、当時の病院長に資格を持った医師を公募するように指示した結果、県立がんセンターが野宮医師を推薦してきたので、面談の上、採用を決定し先進医療施設の認定と保険診療申請に向けた先進医療Bの臨床試験の準備を命じたのである。しかしながら大川元病院長と放射線科治療部長は野宮医師に対するパワーハラスメントや診療・臨床試験への妨害行為を繰り返し、診療の進捗状況を計画の60~70%の低率にしたのである。

このような状況の解決には、放射線治療科部長が自ら「実施責任医師」の資格を取ることが必須である。このため放射線医学総合研究所病院への1年間の派遣を命じたにもかかわらず、県民や患者を無視した自己都合での退職について「理事長のせいだ」と発言する大川元病院長の態度には、管理者としての資質を疑うのである。

神奈川県立がんセンターが自律できていない組織であることは明らかである。大川元病院長が率いる神奈川県立がんセンターでは、県民に高度で医療を提供することは困難であり、ましてや、最新鋭の高度医療機器である重粒子線治療施設の運営などできないと断言できる。

土屋 了介(つちや・りょうすけ)
地方独立行政法人神奈川県立病院機構 理事長
1970年慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学病院、日本鋼管病院、国立療養所松戸病院、防衛医科大学校、国立がんセンターなどを経て、2006年に国立がんセンター中央病院院長。2010年同院長を退任。2012年公益財団法人がん研究会理事、2014年地方独法神奈川県立病院機構理事長就任。