「?」に全部回答してくれる人はいい

私たちは来られたお客様が静かに飲みたいのか、たくさんしゃべりたいのかをまず見極めなければいけませんが、しゃべりには、森先生のような「良いしゃべり」もあれば、「悪いしゃべり」もあります。「悪いしゃべり」の典型は他人の悪口。「誰々は誰々とつきあってる」とか、「あいつ変な服を着てる」とか、本当に嫌です。

2002年の小泉訪朝は、田村氏による北朝鮮“密使”と森元首相(写真上)の仲介が端緒。江本氏(同下)は、夫人を褒めた田村氏に「(結婚できたのは)思わぬ幸運でした」と一言。

こちらが聞いてもいないのに、「今日、どこどこで何を食べた」とか、自分の一日の行動を日記のようにべらべら話す人がいますが、自分に中身がないことを饒舌でごまかしているのです。自分にコンプレックスがあるから、それを隠すためにしゃべり続ける。自分がどうやって生きていったらいいかわからない、自信のなさの表れです。

別にしゃべることじたいが悪いわけではありません。自分の仕事の話を一生懸命してくれる方には、むしろ魅力を感じますね。聞いている私たちも何かしら学ぶことができますから。

話し上手の方がいる一方、聞き上手の方もおられます。妙にはしゃがず、静かにしていて、何となく「声をかけてあげなきゃいけないかな?」という雰囲気がある、私たちの悩みを聞いてくれそうな人、ですね。

お客様がそういう方かどうかは、何となくわかるんです。「どんな歌がお好きですか?」「どんな女性がお好きですか?」といった「?」に全部回答してくれますから、そこからどんどん会話が膨らんでいって、どんどん入り込む。話を聞いてくれるから、こちらも「私はこうなんですよ」と自分のことを話したり、それを上手に繰り返したりしてその場が盛り上がるんです。