意見が変わったら、自分もそれを潔く認める

部下に指示した内容が基本的な方針ならば、簡単に変えてはいけません。しかし戦術については、むしろその時々の状況に応じて、臨機応変に変えていくことが求められます。大事なのはその区別をはっきりさせることです。

もしあなたが「言うことが毎回変わる」と部下から不信感を持たれているとしたら、部下に自説をぶったり、指示を出す前に、「待てよ。今から言おうとしているのは、3段階のどれについての話なんだ?」と自問する習慣をつけるといいでしょう。

実際に部下に指示を出す場合にも、「これはうちとして曲げられない基本方針だ」「これはあくまで今回かぎりの対応だ。こういう対応は、相手や状況によって柔軟に変えるものなんだ」と断りを入れるのです。そうしておけば、明らかに前回とは違う対応の指示を出したとしても、部下は「ケース・バイ・ケースで違ってくるのは当然だよな」と解釈し、不信感を抱くことはなくなります。

もう1つ大事なのは、意見が変わった場合に、自分からそれを認めること。何かの問題について新しい情報が入ってきたら、「認識が間違っていた。本当はこうだった」となるのは、当然のこと。「前におれが言ったことは間違っていた」と素直に認められる上司は、「度量の大きな人だ」と部下から尊敬されます。「言うことがころころ変わる」と陰口を言われている上司は、そのことに気がついていないのです。

本田有明(ほんだ・ありあけ)
人事教育コンサルタント、本田コンサルタント事務所代表。1952年、兵庫県生まれ。慶應義塾大学卒業。社団法人日本能率協会勤務を経て、96年に独立。経営教育、能力開発などの分野で活躍。『上司失格!』『結果主義のリーダーはなぜ失敗するのか』など著書多数。
 
(構成=久保田正志 撮影=永井 浩)
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