東京五輪で起きる築地発! 小池渋滞

自公の圧勝に終わった総選挙。与党側にとっては「選挙をやった意味があるのか」と感じるほど解散前とほぼ同じメンバー構成となった。両院で3分の2以上の議席を確保した与党が、絶対安定多数の下で東京五輪・パラリンピック開催の2020年まで進んでいくことになる。

しかし、安倍政権そして自民党にとって死角がないわけではない。特に五輪開催前年の19年には最大の危機が訪れる。マスコミに注目される憲法改正以前に取り組むべき課題はたくさんあるのだ。今回は、その危機も含めて私なりの「近未来年表」を披露したい。言っておくが、これからの日本、いいことなど一つも起きない。

バカ騒ぎ五輪よりも大切なのは2019年! 「2019年には、さらに日本政府が主導して開くアフリカ開発会議(TICAD)の第7回会合も横浜市で開催が決まっている。20年五輪だけではない日本の正念場だ!」と飯島氏。(写真=時事通信フォト)

まず、小池百合子都知事の問題からはじめよう。築地市場の豊洲移転延期の影響で着工が遅れた都道環状2号線の新橋-豊洲間は、片側2車線の地下トンネルの計画から片側1車線の陸上道路に変更された。車線が減って五輪開催時の選手や観客のメインの移動ルートとしては見劣りするだけでなく、築地周辺では慢性的な渋滞が予想される。新聞や雑誌が「小池渋滞」と書き立てるのが今からでも目に見えるようだ。

その縮小環状2号線の完成は20年3月とされているが間に合うかどうかは微妙な情勢だ。それも原因をつくったのは小池自身だ。

五輪関連施設の工事では、落札額が予定価格に近い例が相次いだことから、小池は「ドンの暗躍」だの「闇の利権」などと難癖をつけて、都が発注する工事の入札改革を断行した。予定価格の事前公表をやめることに加えて、参加企業が1社だけの場合は入札をやり直すようにしたところ、工事に手を挙げる企業がいなくなってしまった。バカげた入札改革で大した利益も見込めないのに、五輪前の大規模工事が集中して建設作業員の確保が難しい中で納期が遅れれば、小池から舌鋒鋭く責められるのは必至。経営者、責任者には、漏れなく都議会による「公開処刑」「人民裁判」が待っている。

そもそも工事が遅れたのは小池の豊洲移転延期が原因だ。五輪前に道路が間に合わなければ入札改革の失敗が追加される。もしも間に合ったとしても今度は大渋滞の問題が浮上する。20年7月には都知事選が実施される。小池都政に、都民の審判が下るのだ。その後に行われる五輪の開会式、閉会式に、小池はどんな身分で出席するのだろうか。

次に国政の課題を見ていこう。来年18年の政界最大のイベントは9月の自民党総裁選である。安倍総裁の3選は絶対に大丈夫というのが永田町の空気だが、それほど簡単にはいかないというのが私の考えだ。

選挙で大勝したというのに、自民党内には執行部への不満が渦巻いている。官邸が強すぎるがゆえの「政高党低」の傾向がさらに強まりそうな状況への不満である。

かつての自民党では、あらゆる分野の専門家がそろっていて、党内で盛んに政策論争が行われていたものだった。そして、一度決まれば国会には団結して臨む。しかし、「政高党低」の下では、自民党を完全に無視する形で、首相官邸=政府から降りてくる政策を追認するだけの機関になってしまっている。これが中国共産党や朝鮮労働党であるなら不思議なことではないのだが、それでは間違いが起こりやすいし、間違いが起きたときに、誰も助けようとする議員が現れず政権が立ち往生してしまう。今、自民党では自らのアイデンティティである政策立案に参加できないストレスが蓄積されている。やる気のある有望な議員ほど不満が大きい。特に第4次安倍内閣発足後の首相記者会見で語られた政策は党内議論を経ていない官邸主導のものが多く、岸田文雄政調会長の面子は丸つぶれとなってしまった。これまでは安倍総理からの禅譲を目指すとみられていた岸田派の方針が変われば、総裁選の波乱要素となる。そして、同様に無視された公明党も満足しているとは言い難い。

政権基盤というものは、外圧を受けると反発して求心力が高まるが、逆に内部からの反乱には脆いものだ。総裁選をめぐる不穏な空気が現政権の崩壊への序曲とならないよう細心の注意を払ってもらいたい。「政高党低」は限界に近づいていると思う。まずは、経団連との対話の席に党の役員を出席させるなど、政策立案の過程で形だけでも党を尊重する姿勢を見せてほしい。