現状の迎撃システムは確実性に不安が

北朝鮮領土内のどの地点から発射してもアメリカ本土の西半分に届くであろう火星14号の登場は、アメリカにとって大きな誤算であったのだろう。その後のトランプ政権の反応は、打って変わってヒステリックになった。

現状では、火星二桁シリーズ(特に火星14号)がアメリカ本土へ向けて発射された場合、洋上に展開中のイージス艦による迎撃は現状では困難で、実質的にはミサイルがアメリカ本土により近づいてから、地上配備型のミサイルによる3段階の迎撃――迎撃高度順にGBI→THAAD(終末高高度防衛ミサイル)→PAC-3で対処することになる。とはいえ、確実性の面でやや不安があり、高高度迎撃能力を強化した新型SM-3(ブロックIIA)がイージス艦に本格的に配備され始める2018年以降まで、アメリカは枕を高くして眠れない状況に置かれている。

一方、火星7号の射程内にほぼ国土全体が収まる日本を、わざわざ火星12号や14号といった長距離ミサイルで攻撃する理由は、戦略的にはあまりない。したがって、北朝鮮が多数保有する短~準中距離ミサイルに比べれば、わが国にとって直接の脅威となる度合いは高くないといえよう。

ただ、それにも例外はある。そのひとつが、高高度を経由する山なりのロフテッド軌道での投射と、わが国上空を通過するコースを飛翔中の事故である。この2つの脅威については、次回の記事で詳しく述べたい。

芦川 淳(あしかわ・じゅん)
1967年生まれ。拓殖大学卒。雑誌編集者を経て、1995年より自衛隊を専門に追う防衛ジャーナリストとして活動。旧防衛庁のPR誌セキュリタリアンの専属ライターを務めたほか、多くの軍事誌や一般誌に記事を執筆。自衛隊をテーマにしたムック本制作にも携わる。部隊訓練など現場に密着した取材スタイルを好み、北は稚内から南は石垣島まで、これまでに訪れた自衛隊施設は200カ所を突破、海外の訓練にも足を伸ばす。著書に『自衛隊と戦争 変わる日本の防衛組織』(宝島社新書)『陸上自衛隊員になる本』(講談社)など。
(写真=朝鮮通信=時事)
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