話し出す前に、まずは空気を読む

今回のテーマは「スピーチ」。知事や議員になると、毎日のように、スピーチを求められます。ビジネスの場でも、同じでしょう。

7月の都議選投開票日の翌日、私は当選者たちにメッセージを送りました。これから4年間、都議会議員としてどのような心構えで役職を全うすべきか、なかでもスピーチの大切さを伝えました。

ヤジが飛ぼうとマイクの前では沈着冷静
過去の東京都議会定例会では、答弁を行おうとした小池氏に対し、議員から「聞こえない!」とヤジを飛ばされたことも。小池氏は「では、大きい声で話せばいいんですね」と冷静に答弁を続けた。(写真は、2016年10月4日、東京都議会定例会)(日刊現代/AFLO=写真)

議員になった瞬間から周囲の目は変わります。すぐにさまざまな会合へのお誘いも押し寄せます。そのような席での振る舞い方、またどのようなスピーチをすべきかといった問題は、おそらく都議会議員でなくとも社会人なら誰もが直面する課題です。新人として、あるいは社の代表として、はたまた結婚式や弔事などでも、私たちは人前で話さなくてはならない場面に遭遇します。そこで私なりに経験してきたスピーチのコツをまとめておきます。

英語ならばさしずめ“Ladies and gentlemen,”、日本語ならば、「本日はお招きを賜りまして」と決まり文句で始まることの多いスピーチですが、実は正解はありません。私自身も硬派なものから柔らかめなものまでさまざまなタイプをストックしており、その場に応じて使い分けています。要は、一番大切な原則は「TPOに合わせること」です。

ホテルなどでのパーティ、街頭演説、あるいは皇室の方も列席される式典など、さまざまなシチュエーションがありますが、「この場で自分が求められているのはどのような役割か」をまず整理しておきます。たとえば自分より目上の方が同席されている席で、砕けたギャグから入ろうとするのは顰蹙ものです。

「冒頭のつかみが肝心」「個性を見せたい」と勇みたい気持ちもわかりますが、この類いのスピーチの目的は、なによりもまず「安心感を与える」ことです。「信頼に値する人間なのか、しっかり志を持っているのか」を知りたい聞き手の不安感を拭い、信頼を勝ち取ること。そのためには小手先のテクニックは不要です。