では、どのような人間性を持つ上司なら、部下は素直に耳を傾けるのか。 コンサルティング先の社員に「信頼できる上司」についてアンケートをとった結果、上位二つの回答は次のとおりでした。

「言っていることと、やっていることが同じ上司」
「保身のために動かない上司」

「言行一致」「保身に走らない」上司が信頼される

言行一致のほうから考えてみましょう。 言行が一致しない上司の多くは、視線が内向きです。内向き(社内)になっていると、あるときは経営陣の顔色をうかがい、また別のときは部下の機嫌を取るというように、まわりに振り回されてどんどん言行不一致になります。

それに対して、言行一致の上司の視線は外、つまり市場(顧客や競合)のほうを向いています。多少の流行はあるものの、競争優位を生み出すためにやるべきことは普遍的なことがほとんどです。そのためしっかり外を向いていれば、語ることや行動は、そう簡単にブレません。だからこそ部下も安心してアクセルを踏めるのです。

保身に走る上司も部下から信頼されません。 上司が保身に走る人物なのかどうかが如実に表れるのは、部下が大きな失敗をしたときです。普段、「好きなようにやれ」と言っているのに、いざ失敗をすると、「事前に報告がなかった」といって責任回避をする上司は最悪です。「好きなようにやれ」という指示の裏には「責任は自分が取る」という意味合いがあるはずですが、失敗すると手のひらを返して部下を責めるのです。これでは部下が心を開くはずがありません。上司が何を言っても聞き流すだけでしょう。

言行を一致させることも、保身に走らないということも、人として守るべき基本的なことです。この二つが上位に入るのは、現実には基本的なことさえできていない上司が多いということの裏返し。気をつけたいものです。

カーナープロダクト代表取締役 横田雅俊(よこた・まさとし)
長野県生まれ。 工学部にて設計を専攻。設計士として活躍。その後、外資系ISO審査機関にて営業職を経験。「最年少」「最短」「最高」記録を更新し、世界8カ国2300人のトップセールスとなる。東京本社マネジャーに就任し、三年で同機関を日本有数のISO審査登録機関(単年登録件数日本No.1)へと急成長させる原動力として活躍。その後、営業に特化したコンサルティングファーム、株式会社カーナープロダクトを設立し、代表取締役に就任。主な著書に『営業は感情移入』『諦めない営業』など。近著に『動機づけのマネジメント』(プレジデント社)がある。
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