あなたが「チクる」のは、どんなときでしょうか。ちょっとした噂話や、自分自身もしているような些細な不正を、相手を追い落とすために悪意を持ってチクったり、チクろうと考えたこともあるかもしれません。

チクる気持ちが湧きやすい対象は、自分の身近な人物です。相手に「嫉妬(ジェラシー)」を抱いたときに、人はチクりをします。たとえば有名人や、会社でも自分とまったく立場の違う人には、羨望や軽蔑を抱くことはあれ、ジェラシーは持たないもの。自分と同等のレベル、もしくは格下だと思っている人が評価されているからこそ、不快を感じ、相手を脅威だと考えるのです。

復讐心はどのように芽生えるのか

誰かに脅威を感じた際に、人間が起こす反応は次の3通りしかありません。無視をする。迎合して媚びへつらう。そして最もわかりやすいのが、攻撃です。たとえばライバルが大口の取引を獲得したときなど、相手がいい思いをしていることへのジェラシーが攻撃性を生み、チクりに走ってしまうのです。

もちろん、チクりにはリスクが伴います。相手に「あいつがチクった」と思われた場合、バラされた側は復讐心をたぎらせます。たとえ不正をしていたとしても、隠しておこうと決めた瞬間、自分の中では「悪」ではなくなる。しかし、それは知られた瞬間にまた悪に変わってしまう。バレたら悪になるからこそ、知られたくないという心理が形成されます。その心理状態では、自分の秘密を露見させて「悪」にしてしまった密告者は、許せない敵になる。なりふり構わずチクった人間を攻撃するようになります。あなたに正義があっても、それに対応するコストは膨大です。

チクりで最も大切なのは、「相手にバレないこと」と言えます。そのために必要なのは、密告する相手、職場の場合だと上司との信頼関係です。上司にチクっても、上司があなたがチクったことを相手に知らせたり、周りの人間にチクった事実を漏らされては、逆効果です。チクった行為そのものを悪いことと捉えられて上司からの信頼を失ったり、チクった情報を上司に都合よく使われることもありえます。

犯人を見つけるテクニックとは

求められる上司との信頼関係のレベルは、「共犯関係」。上司が請求書の偽造などの不正行為をしていて、自分自身も同じように不正をしている。その秘密を共有した関係ならば、文句を言うこともありません。チームで無理なやり方をしてビジネスを乗り切った経験などでも、一種の共犯関係は生まれます。うまく共犯関係をつくりえこひいきされることは、処世術の1つ。そしてもちろん、共犯関係は、自分が部下や同僚からチクられないためにも有用です。

チクり後は、「犯人捜し」が始まります。そのときに、シラを切り通せるか。嘘をつくときは瞬きが大きく、口調が速くなり、別の話題に逸らそうという意識が働きます。心理学のテクニックとしてその部分を意識して直すことが求められます。しかし、そこまで図太い人はなかなかいません。コストに見合った成果が得られるのか、考えるべきですね。

(構成=伊藤達也)
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