ドナルド・トランプ大統領の誕生は、強い指導者をアメリカ国民が求めた結果といえます。敵対するメディアや政治家、イスラム教の国々やメキシコといった貿易関係国を名指しで批判するのも「トランプ流」の特徴です。私たちの職場でも同じように恫喝じみた批判をしてきたり、特定の相手の名前をあげつらってバッシングしたりする、凶暴な上司はいるもの。そんな上役とは、どう付き合えばいいのでしょうか。

ビル・ゲイツも信長もジョブズも同じタイプ

ある意味で最も「上司にしたくない人物」ともいえるトランプ大統領。まず、彼がどんな人物なのかを心理学の面から見ましょう。人間の個性を60分類に体系化した「個性心理學」では、トランプ大統領は「黒ひょう」に分類されます。カリスマ性や力強さ、個性的な格好よさもある一方、誇り高いゆえに傷つきやすい人物と分析できるのです。同じ「黒ひょう」タイプには、ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズといったIT系産業で成功した経営者がいます。

日本人では、織田信長も「黒ひょう」タイプに分類されます。過激な性格の持ち主だった信長は部下の明智光秀を、他の武将の面前で名指しで罵倒したといいます。対テロリズムと対一向一揆のように、抵抗勢力を叩くことで力を発揮する天下人という面でも、トランプは現代版信長のような存在といえます。

彼らのようなタイプは、近づきがたい印象なのですが、直接会ってみると、「なんだ、いい人じゃないか」と思わせる人たらしでもあります。先日首脳会談を行った「こじか」の安倍晋三総理も、会話やゴルフのラウンドを通じて、そんな印象を深めたのではないでしょうか。人たらしゆえに、優秀な部下や参謀に恵まれることも珍しくない。そうすると、成功するリーダーになるのです。

名指し批判をする本当の理由とは

そんな「実はいい人」が、どうして他人を攻撃してしまうのか。心理学的に言うと、それは強気に見えて、実際には自分に自信がないから。彼らは自分を認めてもらいたい、自分の存在感を示したいと願う「弱い人」なのです。彼らが名指し批判をするのは、相手を「いつ名指しされるか」と不安にさせ、常に精神的優位に立つため。一度攻撃してから、和睦に持ち込むことまで計算しています。交渉の場についてみると、相手に「実はいい人なんだ」と思わせる。自分に自信がないからこそ身につけた、一種の交渉術です。過度に恐れるのは、相手の思うつぼです。

そんな上司とどう付き合うか。彼らは、おだてられたり、頼られたりすると有頂天になります。自慢話が大好きですから、熱心に頷き、相槌を打ったり、「凄いですね」と感心したりしてみせる。他人の評価を異常に気にする性格なので、「○○さんが褒めていましたよ」と第三者を出して褒められると弱い。この場合は、その上司よりも上席者の名前を出すほうが望ましいでしょう。

率先してその上司に相談に行くのも効果的です。頼られるのが大好きな性格ですから、懐に入ってしまえば、名指し批判も避けられます。「これも仕事、交渉のうち」と思えるしたたかさを身につけましょう。

(構成=伊藤達也)
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