グローバルで勝てる花王へ――大転換の旗振り役は、もちろん社長の澤田道隆だ。12年の社長就任以来「改革」を推し進めてきた。

花王・澤田社長インタビュー

花王社長 澤田道隆氏

――K20の目標があまりにも高いという声が挙がっています。

「極端に言うと、これまでのすべてを否定したい。やり方、あり方、考え方を全否定しようというところからこの『K20』は始まっています。すべてを変える必要はないかもしれませんが、それぐらいの気持ちでやらないといけない。社員全員がその意識を持たなければいけないのですが、厳しく言えば、まだそうなりきれない部分がある」

と、強い口調で語る。今年スタートしたばかりのK20の進捗は「順調な船出」としつつも、こう続けた。

「20年までに会社を大きく変えることができなければ、30年のありたい姿は達成できないんです。世の中がこれだけ大きく変わってきている。その変化にまだ私たちは追いついていません。過去を踏襲している部分が多い。自らが変わって、変化を先導する企業にならなければいけない」

――竹内俊昭専務は、花王の強みは理屈っぽさだと話していました。

「私自身が思う、花王が最も強い点は『本質的な部分』にこだわるところ。全否定したいと言いましたが、そこは残さなければならない。研究開発は、新商品をどんどん出すことにこだわっているのではなく、皮膚とか毛髪、物質では泡や界面活性剤などの基盤研究にこだわっている。研究開発費のほぼ半分を基盤研究に使っています。基盤研究を中心にしているので、1個の技術が、いろいろなところに応用できる。たとえば『キュキュットクリア泡スプレー』の液体が泡に変わる技術は、『メリット』にも応用されている。だからこそ、対象がグローバルに広がったとしても、その文化、風土や水の硬度などの物理的な条件に合わせてアレンジして商品を提案できる。それが強みなんです」

――挑戦的な投資も増えていますね。

「やるかやらないか迷ったら、やると決めています。東日本大震災やエコナ問題の影響もありこれまではどちらかというと慎重でした。でも、やりたいと言うならやらせてみるという経営のスタンスになってきている」