武器になるのは個人が持つ底力

ところで、日本はそもそもグローバル時代に、その流れに乗っていたかというと、私は否定的です。乗ったとしても周回遅れという感じでした。しかし、それが逆に怪我の功名になりそうです。グローバル化の弊害というのは、極端な貧富の格差を生んでしまったということです。日本はそれが比較的軽度ですんだことは幸いでした。とはいえ、広がり始めた格差は是正すべきです。

これからの時代に日本が発揮できる強みは何かということですが、それは日本企業が持つマネジメント力です。とりわけアジアでの評価が高いことは特筆されていいでしょう。理由はマネジメントスタイルにトップダウン型、それからボトムアップ型、ミドルアップダウン型の3つのうち、日本はこのミドルアップダウン型の経営にあります。

この背景には、国の持つ文化があります。ミドルアップダウン型の経営が生きるのは、日本に昔から「和の文化」が根づいているからです。最近、アメリカのビジネススクールで日本型の経営の研究が人気だというのも、やっぱりそのスタイルに着目しているからでしょう。

これをコンピュータのシステムに例えれば、それは基本ソフト、つまりOSの部分に当たります。ビジネスモデルをはじめ、技術開発、マーケティングはアプリケーションです。そこで、私どもがポスト・グローバル時代に考えるヘッドハンティングもOSを重視するということになります。まさに、それこそが人間力であということです。

これまで、日系資本の人材紹介エージェントも、ほとんどがアプリケーションの部分だけを見て、人材の紹介を手がけていました。しかし、OSを見ないと、中長期にわたっての理想的な就業にはつながっていかないし、成果は出ません。当社はもともと、OSを判断したマッチングをしてきましたから、これからのトレンドは追い風になってきます。

そこで、現時点で日本国内においての市場価値ある人材とは、どういう人かというと、ほかの組織に行って、その異文化に接したときにも、適応できる人です。ただ残念ながら、求人企業側がまだ、そうした視点を持っていません。当面の需要であるアプリケーションの領域ばかりに、目をとらわれてしまっています。

ポスト・グローバル時代になると、武器になるのは人間関係構築力のような個人が持つ底力(OS力)です。新しい組織になじんで、周囲から慕われ、結果を出す。そんな柔軟性、コミュニケーション能力を持つ人にスポットが当たることになるのは間違いありません。

武元康明(たけもと・やすあき)
サーチファームジャパン
1968生まれ。石川県出身。日系、外資系、双方の企業(航空業界)を経て19年の人材サーチキャリアを持つ。経済界と医師業界における世界有数のトップヘッドハンター。日本型経営と西洋型の違いを経験・理解し、それを企業と人材の マッチングに活かしている。クライアント対応から候補者インタビューを手がけるため、驚異的なペースで飛び回る毎日。2003年10月サーチファーム・ジャパン設立、常務、08年1月社長、17年1月会長、半蔵門パートナーズ社長を兼任。
(取材・構成=岡村繁雄)
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