日本中で、どんどんモノが安くなってくれたら
オレの(やや安めの)給料でも
楽しく生きていけるのになぁ。

 

あほ!

 

あほあほあほあほ!

 

あ! また出てきた! 右手じじい!

 

誰が右手じじいだ!
チャーミング右手おじさまのスミヤンだろうが!

 

何だよ!
チャーミング右手おじさまって!

 

おまえ、
「何でもかんでも、どんどんモノが安くなれば
いいのに。デヘヘヘヘ。ウヒヒヒ~」
とでも思ってるんだろ!

 

なんでわかったんだ!
デヘヘとは思ってないぞ!

 

わしは、せこいことを考えている奴の心が読めるのさ!

 

世の中、モノがどんどん安くなるのは、
地獄の始まりなのだ!
デフレは知っているのか?

 

え? こわ……
デフレくらい知ってるさ。
「不景気」って意味でしょ?

 

違うわい!
デフレの本当の意味を教えてやるわ!

 

ボヨーン

また、オッサンの講義が始まった!

 

デフレは「不景気」って意味ではない!
物価が持続的に下落していくことだ。

 

安くなるのはいいことじゃん!

 

いや、違うね!
物価がずっとさがり続けると、ろくなことにならんのだ!
おまえ、来月マフラーが100円になるとわかっていても、
このマフラーを、今買うかね?

 

待つ!

 

デフレの世の中では、そうやって、客の買い控えが始まるのだ!
そこで、商店はどういう手を打つと思う?

 

今、値段を安くするしか……

 

その通り。それで商店は儲かるのか?

 

儲からない!
可哀想な商店!

 

この流れが連鎖するのじゃ。
もしその商店の店主がもともと
お前の百貨店の客だったらどうなる?
百貨店から贅沢なものを買えるかね?

 

買えなくなる!!
商店の店主は安酒を飲んで寝るばかり!!

 

デフレの「負の連鎖」は、やがておまえにも及ぶのじゃ!

会社が儲からないからサラリーマンの給料は上がらない、ボーナスも減る。
懐の寂しくなったサラリーマンたちが消費を減らすので、
一層モノが売れなくなり、売り手はますます値下げをする。
そしてますます給料は下がる。

 

この悪循環が「デフレ・スパイラル」だ!
ドーン!!

 

ギャアアアアアア!!!!

マフラーなど、まだかわいいものじゃ。
自動車、家、工場建設など
新しくするのにお金がかかるものほど
「買い控え」の対象となりやすい。
その額の大きさゆえ、景気への影響も大きいのだ。

 

デフレ怖し!!

 

もっと恐ろしいのが「デット・デフレーション」だ。
借金をしている人や会社が
デフレになってさらに苦しくなる、という状態じゃ。

デフレが進行して、給料も物価も半分になったとしよう。
デフレになる前に、住宅ローンを借りている人はどうなる?

 

給料が半分だから、返すのが苦しい!

 

その通り。
会社も、同じことじゃ。
返済ができなくなり、サラリーマンや企業が破産する。

破産が増えると
お金を貸していた会社も倒産するかもしれない。
連鎖倒産だ。

 

連鎖倒産!
もしかして、わが静屋百貨店も!

 

最悪なのは、銀行が倒産だ!
そうなったら
経済は大混乱だ!!

 

フェゲエエエ!!!!

デット・デフレーションを恐れて
「借金して工場を建てるのはやめよう」と考えたり
銀行が「ちょっとでも不安な客には融資しない」と考えたりすれば
企業の経済活動が滞って、さらに景気が悪化する。

 

デフレってろくなことないじゃん!
デフレのクズ!!!

 

「モノが安く買えてお得」というのは、
ある一面からしか見ておらん考えなのじゃ!

物価の安さを喜んでいる間に
給料が減ったり
やがて失業しかねない
というわけだ。

 

よし!
買い控えは日本全体にとっては悪なんだな。

 

このマフラー、今すぐ買うぞ!

……ちょっと待って。
ついでに、私にも買っておくれ。
首元が寒いんだ。

 

なんでオッサンのために?

 

買えよ。バカ。

 

あ、やだ。

 

嘘だよぉ~。
買ってよぉ~。
寒いよぉ~。
欲しいよぉ~。

 

しょうがないなぁ(哀れだなこいつ……)。

 

あったかぁ~い。

 

モノが安くなるのは消費者にとってはうれしいけど、
それが長い間続くと、いずれは自分の首を絞めることになる。

逆に言えば、物価が上がるのは正直オレには痛いけど、
デフレを脱するためには必要なことなんだって、わかったよ。

 
監修 塚崎公義
久留米大学商学部教授。1981年、東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。経済分析、経済予測などに従事し、2005年に退職して久留米大学へ。『なんだ、そうだったのか! 経済入門』など著書多数。