築地市場地下に何がある?

――首相官邸に、服部幸應さんをお招きし、対談を行った。
(左)服部栄養専門学校理事長・校長 服部幸應氏(右)飯島勲氏

【服部】小池百合子東京都知事が就任し、築地市場の豊洲移転について、様々な観点から調査をしたところ、豊洲には大きな問題があることがわかりました。私は、築地で働いているみなさんとも話をしていますが、食の市場として豊洲が本当に適切なのか、とても心配です。

【飯島】私は、豊洲よりも現在の築地のほうが心配です。築地は幕末から明治にかけて海軍の施設が集中していた場所です。その後、1923年の関東大震災で日本橋魚河岸が焼失して、移転先に選ばれたのが築地。海軍が表に出したくない有害物質を埋めたという噂があり、毒ガスが埋められた疑いまでささやかれています。それから建物の老朽化でアスベスト被害が広がる心配もある。

【服部】確かに、戦後にはいろいろありましたね。

【飯島】ビキニ環礁の水爆実験で被ばくした第五福竜丸が獲ったマグロとサメが搬入されています。基準値を超える放射線が検出されてマグロの価格が暴落したので、今のように除染の知識もないから、そのまま敷地内に埋めてしまった。「原爆マグロ塚」も建てられたが、実際にどこに埋められたか正確な記録が残っておらず、掘り返すこともできない。森喜朗五輪組織委員会会長は「築地市場の跡地は駐車場」と言ったそうですが、確かに駐車場くらいしか使い道はないでしょう。

【服部】トンネルを掘るはずだったのをやめたという話もありましたね。

【飯島】東京都の幹部は裏の裏を知っていて、いろいろ隠しているのではないかと疑っているぐらいです。市場の仲卸業者たちは「このまま築地で営業を続けたい」と話しているようですが、事実が公になれば、パニックが起きるかもしれません。

【服部】仲卸のみなさんは必死で頑張っていて、相当つらい思いをされています。築地の問題がわかったから移転を計画したのに、移転先の豊洲で問題が噴出して、どうしてよいかわからなくなっています。

【飯島】豊洲の建物は、盛土はなくても地下水を抑制する設備を整えて、汚染を防御することは可能です。私は一秒でも早く豊洲へ移転すべきだという立場ですが、後は、小池知事がどんな落としどころで決断するか。

【服部】飯島さんのお話を聞いていると、豊洲に移転したほうがいいようにも思います。いずれにしろ日本の食の信頼を守るためにも、消費者が納得できる結論を出していただきたいです。

【飯島】日本人は、食の安全について過剰になりすぎです。口に入れるものですから、行政側も相当厳しい基準を設けていますが、そもそも100%安全なものだけで、日本人の食事のすべてが賄えるわけがないのに、それを求めてしまう傾向にある。

【服部】消費期限・賞味期限が来ていない食品が袋の封を切ることもなく捨てられるという問題もそうかもしれません。京都で実施した調査結果ではカロリーベースで14%くらいが捨てられていたそうです。日本の食料自給率は39%しかありません。61%が輸入食品に頼っています。日本人全体の食糧は約8500万トンといわれていますが、このうちの2800万トンが廃棄されています。骨や皮など食べられない部分もあるので、実際に食べられる状態の廃棄物は642万トン程度ですが、日本人が捨てずに世界で食糧難に悩む人の手にわたれば、現在、栄養失調の人口の約半数を救うことができるのです。

【飯島】私は消費期限が切れたって何も気にしませんよ(笑)。昔はカビた餅でも平気で食べていたものです。

【服部】食べ物を大事にしない半面、本当にいい物を食べていないのも日本人の特徴です。チェーン店の味になれきっていて、家庭でもきちんとした食事を作らない。レストランも本当にいいお店が潰れてしまう。