リニアの開通で巨大都市ができる

鉄道についてはどうでしょうか。日本の新幹線は、19世紀にヨーロッパで生み出された鉄道という技術をもとに、やはり日本の地理的特性が影響し、独自の進化を遂げてきました。その到達点が東海道新幹線であると言えます。

東海道新幹線とヨーロッパの高速鉄道の違いは、平面交差や踏切のない高速旅客列車の専用線を設けるとともに、速度を制御し、絶対に衝突を防ぐATC(自動列車制御装置)を導入したことにより、絶対の安全を確保しているという点です。

1964年に開業した東海道新幹線の成功に触発され、世界各地で高速鉄道が走り始めましたが、ヨーロッパは地理的条件として広大な平地に中規模な都市が点在しているがゆえに、東海道新幹線に比べて輸送密度がそれほど高くありません。

また、高速鉄道がローカル列車や貨物列車と同じ路線を走り、踏切も通過します。そのため、衝突事故を想定して頑丈な客車を重い機関車で牽引する構造となっており、エネルギー効率が悪く、線路に対する負荷も大きくなります。こうした意味で、日本とは異なる進化を遂げてきました。

一方、東京~大阪間という回廊は、日本全体の面積の約1割に過ぎませんが、全人口の約6割が住み、GDPの約6割を生み出しています。ヨーロッパと違い、乏しい平地が沿海部にベルト状に連なる日本固有の地形が、輸送密度の極めて高い回廊を形成し、そのなかで、東海道新幹線は高速鉄道のブレークスルーを果たしました。

鉄道にとって、人口動態と地形は表裏一体の関係にあります。いま当社が進めているリニア中央新幹線が開業すれば、東京~名古屋間は1時間34分から40分に、東京~大阪間は2時間22分から1時間7分になります。東京~大阪間は1つの都市圏になるともいえ、世界でもユニークなベルト地帯ができます。

東京~大阪間以外で超電導リニアシステムが効果を発揮する場所は、アメリカの北東回廊、すなわちワシントン~ニューヨーク~ボストン回廊です。交通渋滞に悩む北東回廊にリニアが開通すれば、アメリカ全体の交通インフラにいい影響があるはずです。