不足がなければ十分、必要なら稼げばいい

経営者にとってのお金には、個人のお金と会社のお金があります。僕は個人のお金には興味がない。部屋が余るような豪邸に住むのは無駄だと思うし、ダイヤモンドが欲しい、フェラーリが欲しいという贅沢にも興味がない。仕事で料亭や高級フレンチを使うこともあるけれど、自分1人で行く気はありません。それは以前もそうだし、今もそうです。

一方、会社のお金はビジネスを大きくしていくために、使えるだけ使う。最近も10億円ほど調達しましたが、それは必要なお金なんです。その代わりオフィスの調度類はタダでもらってきた中古品ですが、「節約」ではなく適切に配分しているだけ。動かせるお金をどこにどう使うかということが大事なんですね。

借金を返し終わって再スタートしたときも、最初はお金がなくてもできる商売から、知人の会社の一角を借りて人材派遣業を始めました。それからM&Aの仲介で1億円稼ぎ、そのお金を元手にレンタカー会社の買収、メディカルケア会社の買収と事業を拡大して一気にV字回復をしたわけです。

僕が思うに、お金は不足がなければそれでいい。何かやりたいことがあって、そのためにお金が不足しているなら、その分を稼げばいいんです。部屋の電気をこまめに消して節約しても年間たかだか数千円でしょう。それよりも僕ならば、所得を伸ばすことを考えます。

今のご時世、企業の中で仕事のスキルがきちんと評価される時代だから、仕事ができる人は今よりも給料が高い会社に転職すればいい。自分で事業を始めてもいいですね。僕の知り合いに、副業で観賞用のエビを増やしてネットで販売している商社マンがいます。年収2000万円ぐらいもらっている人ですが、副業のエビの売り上げが年収を超えたそうです。

僕が起業した30年前、事業を始めようと思ったら、まず電話番の事務員を雇わなければなりませんでした。FAXも1台200万円もした。その時代に比べたら今はめちゃくちゃ起業しやすい環境です。ネットと携帯電話があれば、すぐにでもビジネスが始められますし、創業資金融資制度もある。稼ぐ方法はいろいろあるんですよ。

※2001年10月~04年3月まで日本テレビで放送された番組。志願者の事業プレゼンを「マネーの虎」と呼ばれる起業家たちが判定。自腹での出資の可否を決定した。

(田端広英=構成 遠藤素子=撮影)
【関連記事】
先人に学ぶ「起業」で破滅しないコツのコツ
一家心中を覚悟した途端、怖いものがなくなった -雪国まいたけ社長
「人より金持ちでいたい人」は、富裕層はムリ
緑茶・伊右衛門の福井家 家訓「儲けるつもりで損するのが商売」
ある“セレブ”妻の転落 ――優雅な生活から一転、パートをかけもちする日々へ