日本人のアイデンティティを持って行動する

【三宅】話題を音楽に戻しますが、横山さんは、一流の演奏家とトリオを組まれることが多いですね。そうした場合には、素人にはうかがい知れない創造の時間があるのかもしれません。演奏がうまくいった際の喜びというのは格別な思いあるのでしょうね。

【横山】お互いの音楽性を理解していれば、相手に無理矢理合わせる必要がない。「あ・うん」の呼吸でそれぞれの、例えばバイオリンやチェロの良さを引き出し合いながら自分の表現もできるということですかね。ちょっと表現が難しいのですけれど……。

【三宅】本当に3人の演奏が始まった瞬間に圧倒されました。先日のドボルザークはまさに圧巻。あまりなじみのない曲なのに一気に引き込まれていきました。

【横山】トリオは一番面白い編成なんです。お互いの個性を殺さないでアンサンブルができます。

【三宅】英語学習と音楽、スポーツの練習はとても似ている面があると思っています。うまくなるコツは優秀な教師やコーチにつくことではないでしょうか。それと、飽きずに繰り返すこと。そして、ある段階に達したら、人前でその成果を披露するという目標もあります。

私もピアノの発表会が近づくと、仕事が終わる夜9時半から1時間、2時間とスタジオで練習します。本当は、早く帰ってお酒を飲みたいけど、なぜやるかといえば、少しでもいい演奏をして、上手になったという手応えを感じたいからにほかなりません。英語のスピーチ大会も同じだと言っていいでしょう。横山さんはどうお考えですか。

【横山】まったく同感です。英語は、目的があるといいですよね。例えば、今度、海外旅行に行くので、お買い物とレストランのオーダーを英語でしたいとか。それぐらいの会話なら、必要な言い回しはそんなにないと思うので、まず、そこをマスターする。できれば、そうした会話を文字に置き換えることも大事だと思います。そうすることで、はじめて身につくような気がします。

『対談! 日本の英語教育が変わる日』三宅義和著 プレジデント社

【三宅】横山さんも、その1人ですが、いま日本では世界と伍していけるグローバル人材を育成しようという気運が強いですね。横山さんご自身は、どのような人材像を持たれていますか。音楽の世界の後輩の人たちも含めて、励ましのメッセージをいただきたいと思います。

【横山】偉そうなこと言える立場ではないのですが、日本人で海外のオーケストラに在籍されている方もたくさんいます。当然、その国、その楽団の一員としてなじんでいるから活躍されているわけです。ただ私が、これから留学される人たちに伝えたいと思っていることは、日本人としてのアイデンティティをしっかり持って行動するということです。どこの国に行っても、自分は日本を背負っていると思って相手と接してほしい。なぜなら、自分の振る舞いが日本と日本人のイメージを決めてしまうからです。

【三宅】本日はありがとうございました。

(岡村繁雄=構成 澁谷高晴=撮影)
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